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三百年の謎匣/芦辺 拓 |
2005年発表 ハヤカワ・ミステリワールド(早川書房) |
まず、書物に記された各エピソードについて。
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森江春策は各エピソードに残された謎を解いた後、それぞれのエピソードで使われたトリックを以下のように要約し(305〜306頁)、
例えば「トリック1」が“二重性”を利用したものとはいえず、また逆に「トリック2」が“空間の錯誤”とは無関係であるように、6つのトリックすべてが双方の要素を備えているわけではありません。そもそも“ものごとの二重性”と“空間の錯誤”とは独立した要素であって、それを組み合わせることですべてのトリックが一つの共通点を備えているかのように強弁するのは、それ自体が作者によるあまり出来のよくないトリック、悪くいえば欺瞞としか思えません。 それぞれのトリックをもう少し詳しくみてみると、「トリック1」は秘密裏の移動によるアリバイトリック、「トリック2」は船の“一人二役”トリック、「トリック3」・「トリック5」・「トリック6」・外枠部分のトリックは二つのものを誤認ないし同一視させる“二人一役”トリック、そして「トリック4」は錯視トリックといったところでしょうか。そう考えると、「トリック3」・「トリック5」・「トリック6」は何とか外枠部分のトリックと関連しているといえますが、「トリック1」・「トリック2」・「トリック4」はほとんど無関係というべきでしょう。
また、トリックの“連鎖”についても同様です。森江は |
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