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不思議の国のアリバイ/芦辺 拓 |
1999年発表 (青樹社) |
プロローグに仕掛けられた、“佃”・“築地”・“神田”といったカーナビの表示と、
一方、 本書の眼目であるアリバイトリックのうち、電話トリックは面白くはあるものの、(作中でもそうなっているように)通話記録を調べられれば一発で露見してしまう、かなり危ういトリックになっているところが残念。一方の地名誤認トリックは、驚くべき一致の度合いもさることながら、冒頭の叙述トリックと呼応している点や、『地底獣国の殺人』で扱われた“邪馬台国論争”がヒントになっているところが面白く感じられます。また、光岡潤子のトリックと殺された青蓮院文彦のトリックが組み合わされて相乗効果を上げているという構図もよくできています。 さらに、被害者自身が変装した痕跡を消去するためという、“顔のない死体”の扱い方も面白いと思います。例を見ないその理由もさることながら、特撮映画を扱った物語にぴったりはまっているところが見逃せません。
ただ、日本では認められていない司法取引が行われたことを露骨にうかがわせるラストははいかがなものか。しかも、 そもそも、光岡潤子の罪をなかったことにしてしまうというのは、司法の恣意的な運用に他ならず、『時の誘拐』や『死体の冷めないうちに』といった他の作品で警察に対する不信を訴えてきた作者の姿勢と矛盾してしまうのではないでしょうか。 2006.05.03読了 |
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