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青列車は13回停る/ボアロー/ナルスジャック

Le train bleu s'arrete treize fois.../P.Boileau & T.Narcejac

1966年発表 北村良三訳 ハヤカワ・ミステリ1042(早川書房)
「非常警報」
 序盤で“エルバンを狙撃した男”について触れられているので、このラストは納得のいくものです。しかし作者は、ミュレールにそそのかされたジョジイアンヌの心理を重点的に描くことで、読者の注意をこの男から引き離すことに成功しています。

「最後の手紙」
 自白の手紙を取り戻すことができないため、大量の手紙を送りつけてごまかそうというアイデアが秀逸です。そして、それにもかかわらず判事に自白の手紙を引き当てられてしまう主人公の不運。非常に印象的なラストです。

「掌中の取引」
 ユグナンの命を救った電話交換手が、返済を迫られているペイロールだったというのはあまりにもできすぎでしょう。まあ、ユグナンの約束もあまりあてにはならないかもしれませんが。

「襲われた帰還」
 トニーの計画は、ジョーを殺害する間に手下のペトラルドに強盗の痕跡を残させ、犯行時刻には自分は別の場所で強盗(未遂)を行っていたというアリバイを確保するというものです。このアイデアはやはり面白いと思いますし、あくまでも未遂でとどめておく計算高さもなかなかのものです。しかし、トニー以外の全員が共謀していたという真相には、あまり面白みが感じられません。

「奇術」
 給料を運ぶ最中に起こった唯一の怪しい出来事が、実は完全にミスディレクションだったという真相は非常によくできています。また、鞄をすり替えるトリックも、何か異常が起こるまではさほど注意を払わないという人間心理を利用した、見事なものです。

「余分の弾丸」
 ラストで、パトリスの父親の親馬鹿ぶりを笑うべし。

「人は一度しか勝てない」
 シャルルがカジノで勝ったことを正直にイヴォンヌに話していれば……結果はあまり変わらなかったでしょうか。しかし、前向きなラストが印象的です。

「不意打ち」
 当たり馬券を取り戻すための作戦だったはずが、本当に犯罪を告発することになってしまうという、“瓢箪から駒”的な展開が非常にユニークです。しかし、女中が馬券を奪っていた可能性に気づかないというのは、あまりにも間が抜けているように思えますが。

「十一号船室」
 ヴェルサリに襲撃されたことを奇貨として、盗んだ首飾りが奪われてしまったと暗示するというモーランの作戦は、アクシデントをうまく利用するという意味ですぐれたものです。首飾りの隠し場所自体はありがちともいえますが、それが手がかりとなっているところはよくできているといえるでしょう。

「罠」
 最後の場面は、想像してみると笑えます。ダリュエールが鼻持ちならない人間であることが伏線になってるところはよくできています。

「告白」
 “自白”だけでは証拠として弱いので、最終的に主人公は罰せられることはないかもしれません。しかしそうだとしても、愛する女性に裏切られたという心の傷は、なかなか癒されることはないでしょう。

「危険な夫」
 よくできた作品だとは思いますが、中盤、パトリスが強盗に行く場面は不要ではないでしょうか。この真相は隠しておいて、最後の刑事たちの会話で明らかにする方が効果的だと思います。

「逃亡者」
 ラストの描写が不親切だと思います。あまりにもあっさりと書かれているので、一読した時には、主人公が自殺してしまったのかと思いました。実際には、銃声の前に男が壁にぶつかるまで後ずさりしているので、追手に追いつかれてしまったのでしょうけれど。
 さらにいえば、このラストはあまり面白く感じられません。せっかく強度の近視の男という特殊な人物を主人公にしていながら、この設定がうまく生かされていません。例えば、眼鏡を失ってしまった彼が、追いついてきた追手を仲間と勘違いし、安心した様子を見せた後で真相に気づく、という風にした方が面白いのではないでしょうか。

2001.03.29読了

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