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贋作『坊っちゃん』殺人事件/柳 広司 |
2001年発表 (朝日新聞社) |
時代を考えればもちろん納得できるのですが、民権運動と社会主義との対立というフィルターをかけることで、物語がまったく姿を変えてしまうのは驚きです。原典『坊っちゃん』の中の数々のエピソードがまったく違った意味を持ち、登場人物たちも坊っちゃんの視点だけを通じた、悪くいえば一面的なキャラクターではなく、それぞれに奥行きを備えた人物として描かれているところがよくできていると思います。 そして、“坊っちゃん”自身が知らない間に三年前の騒動の中心になっていたという真相も印象的です。裏表のある登場人物たちが、裏のない坊っちゃんをそのまま受け入れることができず、勝手に曲解してしまうのが面白いところです。 赤シャツの死の真相自体はさほど面白いものではありませんが、原典にある(と思われる)エピソードから偽者の存在を導き出しているところはユニークです。 2003.02.05読了 |
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