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読後焼却のこと/H.マクロイBurn This/H.McCloy |
1980年発表 山本俊子訳 ハヤカワ・ミステリ1387(早川書房) |
冒頭で“ネメシス=標的”という図式が提示されながら、ネメシスであるはずのないジェイベズ・コッパードが最初に殺されてしまうという展開がまず面白いと思います。そして、最終的には当のネメシスこそが犯人だったという逆転の構図が秀逸です。 しかし問題なのは、せっかくの仕掛けがうまく生かされていないところです。“ネメシス殺害計画”の存在が頭にある中、被害者がネメシスではない人物だったということで、登場人物たちの困惑がもっと前面に出て然るべきところなのですが、それをぶちこわしにしているのがハリエットの息子・トミーの登場です。 さらに、クレイが亡くなった直後にはもう、トリストラムとクレイが共謀して手紙を書いたことが明かされています。せっかく(?)ネメシス候補となり得る作家が亡くなったにもかかわらず、まったくミスディレクションとして使われていないのは、あまりにももったいないといわざるを得ません。 2004.05.21読了 |
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