デス・コレクターズ/J.カーリイ
The Death Collectors/J.Kerley
2005年発表 三角和代訳 文春文庫 カ10-2(文藝春秋)
死体に施された異様な装飾は前作『百番目の男』と同様にサイコキラーによるものかと思いきや、これ以上ないほど現実的な欲望に基づく行動だったという真相で、完全に意表を突かれました。どこから見てもサイコスリラー風の事件が、北森鴻『狐罠』などを思わせる“アート”をめぐるコン・ゲームへ鮮やかに変貌するという展開が、実に見事です。何でもないと思われた冒頭の授賞式が発端となっているところや、ヘクスキャンプがウィロウに遺した言葉など、数々の伏線もよくできていると思います。
前述のように現実的な欲望に基づいた犯罪ではありますが、それだけに、犯人は見方によってはサイコキラーよりも恐ろしく感じられます。そして、正体が明らかになった場面での豹変ぶりも。
ジェレミーの“友人”として登場したフォリエがここまで事件に深く関わっていたというのは、少々御都合主義の感は否めませんが、それによって三十年以上前に描かれたはずの“アート”の下からカーソンのスケッチが現れるという、強烈に不可解な謎が生じているのがうまいところです。
2007.02.15読了