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歌うダイアモンド/H.マクロイ

The Singing Diamond and Other Stories/H.McCloy

1965年発表 好野理恵 他訳 晶文社ミステリ(晶文社)

 一部の作品のみ。

「カーテンの向こう側」
 レティが巻き込まれた事件が夢ではなく現実であることは見え見えですが、レティ自身が夢だと考えていることがしっかりと描かれていることで、ラストの落差が際立っているところは見逃せません。

「鏡もて見るごとく」
 いくら心臓が弱いとはいえ、あれだけでショック死してしまうものかどうか、というのはさておき、犯人の計画はなかなか巧妙といえるのではないでしょうか。本来であれば発覚する可能性はかなり低いと思いますし、仮に被害者が命を落とすことなく鏡の仕掛けに気づいたとしても、悪戯ですますことも可能かもしれないのですから。

「歌うダイアモンド」
 事件の真相そのものは、複数の被害者の中に真の標的を紛れ込ませ、“偽のミッシング・リンク”で動機を隠蔽するというもので、A.クリスティ(以下伏せ字)『ABC殺人事件』(ここまで)などのバリエーションといえるでしょう。しかし、その“偽のミッシング・リンク”が、“未確認飛行物体の目撃者”という途方もないものであるのはユニークですし、一見自然死とも考えられる殺害手段と組み合わされることで、表面的にかなり不可解な事件に見えるところも秀逸です。
 しかしながら、犯人の計画があまりにも遠回りすぎるところは問題でしょう。また、“偽のミッシング・リンク”がにわかに信じがたいものであるため、あまり効果的ではないように思えるところも難点です。

「人生はいつも残酷」
 フランクによる15年前の事件の犯人探しが中心になるのかと思いきや、“フランク・ブライ”の死体が発見されていたという展開に驚かされます。さらに、フランクの正体があっさりとばれてしまうのもかなり意外です。フランクの疑念がその対象となる人物全員に知られてしまったことによる、微妙な緊張感が何ともいえません。
 事件については、最終的には“なぜフランクが狙われたのか?”という謎がポイントになるわけですが、それに対する答が実に意外で、よくできていると思います。また、その手がかり、すなわち“フランクが死んだと思われていた間に何が起こったか?”という問いが秀逸です。

2003.06.17読了

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