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重力が衰えるとき/G.A.エフィンジャー

When Gravity Fails/G.A.Effinger

1987年発表 浅倉久志訳 ハヤカワ文庫SF836(早川書房)

 冒頭で“ジェームズ・ボンド”の犯行が描かれていることが、ミステリとしてのポイントの一つになっていると思います。殺人犯が最初から明らかになっているために、一見するとフーダニットの要素は皆無で、“ジェームズ・ボンド”を探し出すことが中心だと思わされてしまいます。

 タミコとデヴィの殺され方がまったく異なることで、一旦は複数犯人説が浮上しますが、ここでモディーがミスディレクションとして効果的に使われています。犯人の人格が変われば手口が変わるのも当然。実際に、“ジェームズ・ボンド”がモディーを付け替えた結果、その手口がまったく別物になっていることも、それをうまく補強しています。

 やや地味ではありますが、SFガジェットをミスディレクションとしてうまく使ったSFミステリの佳作といっていいのではないでしょうか。

2004.05.24再読了

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