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伊賀忍法帖/山田風太郎

1964年発表 講談社文庫 や5-9(講談社)

 史実を改変することなく、城太郎の復讐劇に結末をつける――この困難な命題を一挙に解決しているのが、果心居士の未来予知です。

 弾正の死が15年後ならば、そこに城太郎を関与させればいい、というのは確かですが、復讐に15年もかかるのは不自然といわざるを得ません。根来僧たちを倒してしまった後、城太郎が弾正と対決するのを妨げるものはありませんし、両者は不倶戴天の敵ですから、そのままではどちらかが倒れることになるのは必至です。しかし、そこに果心居士を介入させることで、勝負を“預かり”としているところがまずよくできています。

 そして、冒頭の千利休との絡みで伏線が張られている未来予知によって、城太郎の復讐の顛末をはっきりとわかる形で示しているのが、実に巧妙です。読者に対してはカタルシスが与えられますし、確定した未来を示すことで登場人物たちの動きを制し、その場での決着を回避しているのがうまいところです。

2004.08.21再読了

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