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蚊取湖殺人事件/泡坂妻夫 |
2005年発表 光文社文庫 あ12-10(光文社) |
一部の作品のみ。
- 「雪の絵画教室」
- 車輪の跡のトリックについては、事件の前にも後にもアトリエに自転車が存在しなかった以上、外から往復したとしか考えられませんから、ウイリーという真相を見抜くのはさほど難しくはないでしょう。
やはり最大の見どころはあまりにも意外な犯人ですが、その根拠となるのが風景しかなく、しかも伏線がほとんどないためにかなり強引に感じられるのが残念です。
- 「蚊取湖殺人事件」
- 犯人当てとしては、かなりヒントを出しすぎのような気がしますが、ネックになるのはアリバイでしょうか。豪快なトリックが何ともいえません。
- 「銀の靴殺人事件」
- イニシャルがどこに、どのように書かれているのかわかりにくいのが難点か。もっとも、“舞月ひかる”と“原若菜”という二人の名前を考えれば、ひっくり返るのは見え見えといえるかもしれません。
舞月ひかるが原若菜の不在に気づかないというのは、やや不自然に感じられないでもないのですが、鍋島の語る掏摸の話には説得力があります。いずれにしても、ラインダンスという特殊な状況をうまく生かしたトリックです。
- 「秘宝館の秘密」
- 足跡のトリックは、さすがに陳腐といわざるを得ないでしょう。そしてそれ以上に気になるのが、“鈴木小次郎”(と“通子”)はいつ、どのように伊藤荘を抜け出したのか、というところです。
326頁の記述をみると玄関から出て行ったのではないようですし、また雪の上にはトリック以外の足跡が残っていないのですから、非常口からも出ていないことになります。もっとも、足跡トリックで伊藤荘に戻ってきて“銀の間”以外の部屋(例えば死体の発見された“香の間”など)に隠れていた“鈴木小次郎”が、惣太郎らが崖まで足跡を追っている隙に玄関から抜け出したということは考えられますが、“通子”がいつ、どうやって秘宝館へ行ったのか、という問題は残ります。
2005.03.15読了 |
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