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アレン警部登場/N.マーシュA Man Lay Dead/N.Marsh |
1934年発表 岩佐薫子訳 論創海外ミステリ18(論創社) |
本書のミステリとしての見どころはやはり、間の抜けた犯行場面につながるアリバイトリックだと思われますが、最も印象に残るのはその伏線となる以下の会話です。 「(前略)手すりといえば、ミス・アンジェラ、滑り降りたことはありますか?」 伏線としての必要性に加えて、直ちに犯人が特定されてしまうのを避けるためという事情があるのは理解できるのですが、いい大人が揃って手すり滑りに興じるというのはいかがなものか(苦笑)。もっとも、ワイルドのズボンを脱がすという悪ふざけまで行われているので、さほど違和感はありませんが。 しかしながら、手すりの球飾りに残された指紋と上記の会話から、早い段階でトリックの見当がついてしまうところは問題でしょう。しかも、球飾りの指紋の主はすでに明らかになっている(117頁)ので、犯人までもが見え見えです(さらに、手すりから足の指紋が検出されたこと(255頁)(すなわち靴を履いていなかった人物が犯人であること)がだめ押しとなります)。つまり、作中での解決場面ではすでに驚きは残されていないわけで、手がかりの提示などに大きな難があるといわざるを得ません。
トリックについては、どうしてもインパクトのある犯行場面に目を引かれますが、例えば
ただし、この殺人ゲームのルールの中の消灯と銅鑼の順序が、解決場面で大いに足を引っ張っています。 解決場面についてはもう一つ、直前にアレン警部がナイジェルに犯人役を振っている(257頁)意図が、まったく理解できません。結局は実現しなかったわけですし、わざわざそのようなことをするのは無意味としか思えないのですが……。 2006.08.15読了 |
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