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不思議の国の悪意/R.キング

Malice in Wonderland/R.King

1958年発表 押田由起訳 創元推理文庫191-03(東京創元社)
「不思議の国の悪意」
 モールス信号についての伏線がよくできていると思います。そして、エルシーが残したメッセージが解読されるきっかけが何ともいえません。

「マイアミプレスの特ダネ」
 ヴァイオレットがマクガイヤーにプレゼントした磁石入りシャープ・ペンシルが重要な小道具として使われているのには感心させられました。

「淵の死体」
 結末はやや唐突ですが、“公共心を発揮した女性”の陰に隠された殺人者の仮面という図式は鮮やかです。ただ、エルザの死体は……やはりに捨てるのでしょうか?

「思い出のために」
 ジェインと大司教の会話の場面で結末は見え見えです。ただ、この場面を描かないとややアンフェアにも感じられてしまうでしょうし……。難しいところです。

「死にたいやつは死なせろ」
 何度も言及される“ゲットラー検査”が思わせぶりではありますが、あくまで予想できる範囲内といえるでしょう。

「承認せよ――さもなくば、死ね」
 性格の遺伝という考え方には納得できません。が、それ以上に結末が今ひとつです。四人のならず者が犯人にせよ、あるいはアン・ボーニーが真犯人にせよ、どちらの場合でも決め手があまりないこともあって、真相はどちらでもいいという気分になってしまいます。

「ロックピットの死体」
 ステラ殺害に失敗したフィルですが、それを逆手に取った結末が印象的です。

「黄泉の川の霊薬」
 一見医師の指示通りに応急処置をしながら、それがまったく有効でなかったというアクロバティックなトリックが秀逸です。毒を飲ませたのももちろん同一人物ではありますが、薬を与えないことによって殺害するという逆転の発想も印象的です。

2001.10.31読了

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