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ぼくのミステリな日常/若竹七海 |
1991年発表 (東京創元社) |
まずは個別の作品から(一部の作品のみ)。
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「ちょっと長めの編集後記」に書かれた七海の推理のきっかけとなった干支という手がかりは、丹念に配置されているものの、あまりにも目立たなさすぎるように思います。ただ、一人の人間が月一ペースで謎に遭遇するのは不自然だともいえるので(冒頭の先輩からの手紙の中で、 また、七海による説明の中にはありませんが、「消滅する希望」と「吉祥果夢」の2篇が明らかに異色であることも、推理の手がかりとなっているのではないでしょうか。この2篇はどちらも、怪談めいた幻想譚である上に、“ぼく”が謎を解いていない(「吉祥果夢」に至っては、謎らしい謎が登場しない)という特徴があります。2篇だけ毛色の変わった話が入っているのはなぜなのか、というところから作者(辺里)の意図を深読みしていくのは十分あり得ることだと思います。 その七海の推理をひっくり返すポイントとなっている、“ナーガ”及び“普賢菩薩”の使い方も鮮やかです。 *****
そして、「配達された最後の手紙」では辺里の真意が明らかにされています。七海が推理したような殺人の(間接的な)告白ではなく、告発だったという再逆転は非常によくできています。しかも、結果的に七海が「ちょっと長めの編集後記」において、辺里の計画をアシストした形になっているところが、何ともいえない読後感を加えています。辺里の名前を明かしたことももちろんですが、七海自身が滝沢の死を殺人だと推理したことも重要です。この推理の存在によって、滝沢の死が不自然だという印象が一層強調されているのですから。 2003.03.07再読了 |
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