ミステリ&SF感想vol.24 |
2001.08.06 |
『第二の接触』 『大密室』 『あした天気にしておくれ』 『時間衝突』 『招かれざる客たちのビュッフェ』 |
第二の接触 Second Contact マイク・レズニック |
1990年発表 (内田昌之訳 ハヤカワ文庫SF1004・入手困難) |
[紹介] [感想] プロローグこそ宇宙空間での出来事ですが、あとは全編が地球を舞台にしたスピーディーな展開のサスペンスです(本格謎解きではありません)。前代未聞の事件、そして常軌を逸しているとしか思えない艦長の主張というインパクトのある冒頭から、少しずつ真相への手がかりを見つけていく中盤、そして急展開の終盤と、見事な構成になっています。リーダビリティは高く、逆にさらっと読めてしまうところが物足りなく感じられるほどです。
最後の真相が明かされる場面はあっけなく感じられますし、またその真相自体はやや意外性に欠けるかもしれませんが、それが実に巧妙に隠蔽されていた状況は秀逸です。ラストのベッカーの選択は妥当なところだと思いますが、その動機は強く印象に残ります。 2001.07.22再読了 [マイク・レズニック] |
大密室 Repos de Bacchus / La mort est du Voyage ボアロー/ナルスジャック | |
1938/1948年発表 (松村喜雄訳 晶文社 幻の探偵小説コレクション・入手困難) | ネタバレ感想 |
[紹介と感想]
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あした天気にしておくれ 岡嶋二人 |
1983年発表 (講談社文庫 お35-3) |
[紹介] [感想] “人さらいの岡嶋”とも呼ばれるほど、誘拐事件を扱った独特の作品を残した岡嶋二人ですが、その中で『99%の誘拐』が後期の最高傑作であるとすれば、この作品は間違いなく初期の最高傑作といえるでしょう。
殺人事件がすでに起こってしまった犯罪であるのに対して、誘拐事件は現在進行形の犯罪であるといえます。したがって、捜査陣側(あるいは被害者側)に限らず犯人側から描いてもスリリングなものとなるわけで、倒叙形式との相性がよさそうに思えるのですが(例えば上記『99%の誘拐』は倒叙形式で書かれています)、この作品では倒叙形式と謎解きを両立させるという離れ業が成功しています。 倒叙形式の序盤だけでも、窮地に陥った登場人物たちの動揺が手に取るように伝わってきますが、ひねりが加えられたプロットは実に巧妙です。視点人物の朝倉は雇い主の鞍峰に半ば強要されて狂言誘拐を計画したわけですが、予想外の事態に遭遇したことで、狂言誘拐が露見するのを防止するために警察より先に謎を解く必要に迫られます。こうして、物語の緊張感が一層高まると同時に、“素人探偵”が謎を解く必然性も生み出されているのです。 終盤のトリック自体も面白いと思いますが、真相を隠すために注ぎ込まれたミスディレクションがまたよくできています。そして鮮やかなラスト。競馬に興味のない方(私自身もそうですが)にも是非読んでいただきたい作品です。 2001.07.27再読了 [岡嶋二人] |
時間衝突 Collision with Chronos (Collision Cource) バリントン・J・ベイリー |
1973年発表 (大森 望訳 創元SF文庫697-01) |
[紹介] [感想] ワイドスクリーン・バロックの第一人者・ベイリーが、時間テーマに挑んだ作品です。“時間が衝突する”という基本アイデアからしていかにもベイリーらしい破天荒なものですが、プロットもまた豪快です。ヘシュケたちが遺跡と時間の謎を探る序盤から、唐突に舞台は宇宙空間へと移ります。時間を自在に操る中国人たちの宇宙都市〈レトルト・シティ〉で繰り広げられるもう一つの物語にも、独特の奇想が注ぎ込まれています。やがて、時間の謎を探る人々と時間を操る人々が出会うとき、物語はさらに予想を越えた展開を迎えます。一見ばかばかしいとも思えるアイデアの数々が惜し気もなく詰め込まれた波乱万丈の物語。まぎれもなく傑作です。
2001.07.31再読了 [バリントン・J・ベイリー] |
招かれざる客たちのビュッフェ Buffet for Unwelcome Guests クリスチアナ・ブランド | |
1983年発表 (深町眞理子 他訳 創元推理文庫262-01) | ネタバレ感想 |
[紹介と感想] | |
〈第一部 コックリル・カクテル〉
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〈第二部 アントレ〉
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〈第三部 口なおしの一品〉
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〈第四部 プチ・フール〉
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〈第五部 ブラック・コーヒー〉
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