ミステリ&SF感想vol.25 |
2001.08.28 |
『幽霊狩人カーナッキ』 『ビッグ・ボウの殺人』 『女王の百年密室』 『地球の長い午後』 『こちら殺人課!』 |
幽霊狩人カーナッキ Carnacki The Ghost-Finder ウィリアム・ホープ・ホジスン |
1914年発表 (今岡清・野村芳夫・鏡明訳 角川ホラー文庫H510-1・入手困難) |
[紹介と感想]
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ビッグ・ボウの殺人 The Big Bow Mystery イズレイル・ザングウィル | |
1891年発表 (吉田誠一訳 ハヤカワ文庫HM66-1) | ネタバレ感想 |
[紹介] [感想] 100年以上も前に書かれた本格ミステリの古典で、密室殺人という状況に独創的なトリックを導入したことで知られている作品です。さすがに現代ではそのトリックに驚くこともありませんが、非常によくできたものであることは間違いありません。
そしてさらに、物語自体もよくできています。犯行方法が不明であるために動機を中心とした捜査が行われることになりますが、これによって被害者であるコンスタントと友人のモートレイクを中心とした人間模様が鮮やかに浮き彫りにされています。また、物語後半を力強く引っ張るのが、元刑事のグロドマンと現役であるウィンプとの間に横たわる過剰なライバル意識です。“事件の謎を解くのはどちらなのか?”という興味が、後半を大いに盛り上げています。そして意外なラスト。古さをまったく感じさせない傑作です。 2001.08.18読了 [イズレイル・ザングウィル] |
女王の百年密室 God Save the Queen 森 博嗣 | |
2000年発表 (幻冬舎) | ネタバレ感想 |
[紹介] [感想] SF設定のミステリ、というよりはミステリ仕立てのSFといった方が正しいでしょうか。特殊な世界の設定によって成立するトリックが使われていますが、この作品ではその世界の設定自体、そしてそこに隠された秘密の方が重要です。つまり、殺人事件は主人公であるミチルが〈ルナティック・シティ〉という世界について考えるためのきっかけとなっているのです。これはSFでしばしば使われる手法とよく似ています。
そしてその〈ルナティック・シティ〉ですが、22世紀という未来が舞台となっているにもかかわらず、100年にわたって外部との接触を絶っているため、その技術レベルは現代とほぼ同じものになっています。そのために、未来人であるミチルの視点を通じて現代を眺めるような状況となり、読者にとってはあまり違和感がないのではないかと思います。しかし現代と決定的に違っているのは、〈ルナティック・シティ〉に“死”という概念がないことです。“死”ではなく“永い眠り”として、歓迎すべき事態とも受け止められる世界において、誰が何のために殺人を犯したのか。この謎を解くことが、〈ルナティック・シティ〉自体の秘密を解き明かすことにつながるのです。 2001.08.18読了 [森 博嗣] |
地球の長い午後 Hothouse ブライアン・W・オールディス |
1962年発表 (伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫SF224) |
[紹介] [感想] ヒューゴー賞に輝いた傑作SFです。変貌した植物たちが跋扈する未来の地球が、まさに原題どおりの〈温室〉として描かれています。何といっても巨大な植物蜘蛛“ツナワタリ”の姿が印象的ですが、他にも“ハネンボウ”、“ヒカゲノワナ”、“ナマケニレ”など、いずれ劣らずユニークな植物たちが多数登場しています。これらの植物たちが満ち溢れた“豊穣な混沌”ともいうべき世界の姿は非常に魅力的です。
森を離れたグレンは世界の果てまで放浪することになるわけですが、その旅は冒険というよりは苦難の連続です。しかし、それによって変貌した世界の姿が読者に伝わりやすくなっているところはよくできているというべきでしょう。登場人物たち、特に肝心のグレンに今ひとつ魅力が感じられないところがやや難点ではありますが、それも人間よりも世界の方が主役であると考えれば妥当なのかもしれません。 2001.08.22再読了 [ブライアン・オールディス] |
こちら殺人課! レオポルド警部の事件簿 エドワード・D・ホック | |
1981年発表 (風見 潤編・訳 講談社文庫120-1・入手困難) | ネタバレ感想 |
[紹介と感想] なお、NOViさん(「闇夜の戯言」)の「レオポルド警部 作品リスト」に未訳も含めた全作品の一覧が掲載されていますので、ぜひご覧下さい。
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