ネタバレ感想 : 未読の方はお戻り下さい
黄金の羊毛亭 > 掲載順リスト作家別索引 > ミステリ&SF感想vol.9 > 六死人

六死人/S=A・ステーマン

Six Homme Morts/S.A.Steeman

1931年発表 三輪秀彦訳 創元推理文庫212-2(東京創元社)

 裏表紙の説明、扉のあらすじ、そして訳者あとがきですが、ここまで思い切りネタバレするのはどうかと思います。類似のネタが使われているのが超有名な作品であって、その二番煎じととられかねない、というのはわかりますが、もう少し何とかならなかったのでしょうか。

 さて、事件の方ですが、まずナモットとジェルニコ、二人の死体が発見されないことにより、疑惑の対象を絞りにくくなっている部分があります。もちろん“ジェルニコ”の死体は後になって発見されますが、“顔のない死体”であることによってうさんくさく感じられるところもあります。しかし、暗号めいた入れ墨がミスディレクションとなっているところは気が利いています。

 次のグリッブ殺しですが、上の階からエレベーターを呼んでおいて、サンテールが外扉を開けることによってエレベーターが止まるというのは盲点でした。提示される不可能状況、そして意外な解決、ともによくできていると思います。現代のエレベーターとは構造が違っているため、見破ることが困難なのはやや残念ですが。

 事件の動機については、六人の財産目当てであることは想像できますが、逆にそのために事件の構造がうまく隠されていると思います。死んだことになっている人間が財産を相続することはできないため、生き残っている人間に容疑が向くのは当然でしょう。このあたりもよく考えられています。

 某作品との類似云々に関係なく、よくできた作品だといえるでしょう。

2000.06.28読了


黄金の羊毛亭 > 掲載順リスト作家別索引 > ミステリ&SF感想vol.9 > 六死人