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殺人者なき六つの殺人/P.ボアローSix crimes sans assassin/P.Boileau |
1939年発表 松村喜雄訳 講談社文庫 ほ8-1(講談社) |
まず第一の事件ですが、犯人が脱出後に被害者自身(ヴィグネレイ夫人)が閂をかけたという、比較的ありがちなトリックではあるものの、犯人ではなく被害者であるヴィグネレイ氏の方が侵入者だったという逆転の構図は鮮やかです。 第二の事件であるアデール殺しは、第一発見者が犯人というパターンですが、一瞬の隙を突いて“突然出現した死体”という不可解な状況を作り出しているのがうまいところです。 続くジュリアン殺しは、被害者が室外で襲撃され、瀕死の状態で室内に入って施錠するというものですが、被害者であるジュリアンには部屋の外に出ないよう強い指示が出されていたために、犯行現場が室外であるとは考えにくくなっているのがポイントです。 最後のリュパアル殺しですが、犯行後に犯人が一旦外に出てから反転し、監視を続けていたように装っています。ここでは、犯人だけでなく被害者も、出入り口の監視が開始された後に内部に入ったという点がユニークです。 不可能状況が作り出される理由は不自然なところは感じられませんし、事件の動機も納得のいくものだと思います。また、ヴィグネレイ夫人までも銃撃されていることで、この動機、ひいては犯人もうまく隠されていると思います。 2000.06.29読了 |
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