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密室に向かって撃て!/東川篤哉 | |||||||||||||||||||||||||
2002年発表 カッパ・ノベルス(光文社) | |||||||||||||||||||||||||
まず、本書のメイントリックを整理しておきます(括弧内の数字は残弾数です)。
つまり、メイントリックは密室状況からの犯人消失に見せかけたアリバイトリックであり、それを可能にしたのがいわば銃弾(銃声)の“一人二役”トリックということになります。そしてまた、あらかじめ地面に1発撃ち込んでおくことで射殺のタイミングを誤認させているところもポイントです。 しかしこの“一人二役”トリックには、2発分の銃弾を残すことができないという大きな弱点があります。つまり、佐野と神崎が別々に撃たれたことを裏付けるのが(誤認された)銃声しかない状況では、佐野の左腕の貫通銃創がいかにも怪しいものに思えてしまいます(余談になりますが、この点を考えるとやはり逆のパターン、すなわち銃弾の“二人一役”トリックの方が効果的だと思われます)。 また、鵜飼による“銃弾のカウントダウン”も今ひとつしまらないものになっています。上記のように、あらかじめ地面に撃ち込まれた銃弾が重要なポイントであるにもかかわらず、カウントダウンという演出のために早い段階(4発目)でそれが明らかになってしまいますし、あとはごく簡単な算数の問題でしかありません。
もう一つ、ネタの扱い方についても、特に前作『密室の鍵貸します』と比べて物足りなく感じられるところがあります。 メインの謎よりもむしろ、助手の戸村が目をつけた動機につながる手がかりや、トリックによって佐野の左腕の古傷が隠滅されるという一石二鳥の効果、そして肉を使ったテストというアイデアなどが面白く感じられます。 2005.05.06読了 | |||||||||||||||||||||||||
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