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陸橋殺人事件/R.A.ノックスThe Viaduct Murder/R.A.Knox |
1925年発表 宇野利泰訳 創元推理文庫172-1(東京創元社) |
この作品の見どころは、事件の真相自体ではなく、リーヴズをはじめとする素人探偵の面々の推理がどのように外れてしまうのかにあるのでしょう。その意味で、犯人と目星をつけたマリヤットに対してリーヴズが自らの推理を説明してしまったところで、カーマイクルによってデヴナントが自白したという知らせがもたらされる第22章、そして逃げ出したマリヤットが結局はリーヴズの推理をほとんど聞いていなかったことが明らかになる第23章のドタバタ劇は、実によくできていると思います。 しかしながら、このリーヴズの推理にさほど説得力が感じられないところが難点といえます。“失敗する探偵”というモチーフは多重解決にも通じるものですから、間違った解決に説得力があればあるほど、ひっくり返される瞬間のインパクトが大きなものになるのではないかと思います(このあたりについては例外もあるかもしれませんが)。ところがこの作品では、リーヴズの推理(特に動機)が根拠薄弱なものであるため、今ひとつ物足りなく感じられてしまいます。 しかも、最終的に決定される真相もほとんど警察の見込み通りで、奇妙な暗号(のようなもの)は事件にはまったく関係なかったというだけのオチであるため、ますます面白味のないものに思えます。 2003.03.11読了 |
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