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ウェンズ氏の切り札/S=A.ステーマン
Les Atouts de M.Wens/S.A.Steeman |
1993年発行 松村喜雄・藤田真利子訳 現代教養文庫3038(社会思想社) |
- 「ウェンズ氏の切り札」
- フレディとマルタンが同時に登場することはなかったわけですが、それが不自然にならないよう、展開には気を使ってあると思います。もちろん、それぞれの描写もそうです。やや危ないのが、132頁の「フレディとはちがって、きみは煙草を吸わないものと思っていたんだが?」というウェンズ氏の質問のところでしょうか。
ジョーカーの手がかりがよかったと思います。犯人がカードの違いに気づいたのが、ダウーに遺書を書かせた後だったために、そのまま押し通さざるを得なかったというのがよくできています。
ラストは鮮やかですが、“切り札”の演出がややもったいなく感じました。あの切り札は、やはり犯人に対して使ってほしかったと思います。「お前のポケットの中を見てみろ!」といった感じで。
- 「ゼロ」
- おばあちゃんが序盤からいい味を出していますが、最後にはしっかり事件を解決。おいしい役ですね。
ラストの救いのなさが非常に印象的です。占い師ハッサンの予言、「愛することもない……後悔するだろうけどね!」が成就してしまったわけです。
2000.07.09読了
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