誰の死体?/D.L.セイヤーズ
Whose Body?/D.L.Sayers
1923年発表 浅羽莢子訳 創元推理文庫183-02(東京創元社)
よく似た別人の死体を堂々と登場させることで本命の死体を隠蔽するという、シンプルながら効果的なトリックがよくできています。早い段階で別人の死体であることを示し、バールストン先攻法の可能性をあっさりと消しているところに、何ともいえない微妙なわけのわからなさが感じられて面白いと思います。
都合のいい死体を必要とする特殊なトリックであるために、トリックが露見した時点で犯人も決まってしまうという難点もありますが、これは致し方ないところでしょうか。そもそも、死体が発見されたフラットの近所に住み、レヴィと交流があるというサー・ジュリアンは、どちらの事件にも接点のある唯一の人物ですから、最初の時点ですでに怪しいともいえますし。
2006.03.18読了