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漂着物体X/堀  晃

1987年発表 双葉文庫 ほ01-1(双葉社)

 一部の作品のみ。

「青い宇宙服の男」
 ラスト近くの“私”の独白は、量子力学の観測問題を思い起こさせます。

「宇宙牢」
 消えたエネルギーが、ちょうど人間ひとりの“意識”に相当するものだったというのが伏線になっています。つまり、意識の時間を絶えず5分間逆行させることで、所長の意識が二重に存在する状態になっていたわけです。

「光と闇と……」
 未知の宇宙船はエントロピーが減少する宇宙からやってきたわけで、その乗員たちにとってはエントロピーの減少が老化につながるのだと考えられます。つまり彼らは、自分たちの持つエントロピーを一人に集中させることで時間を逆行させようとしていたのですが、“私”が幼児を殺してしまったことで膨大なエントロピーが行き場を失い、そのために乗員たちは若返り、“私”は老化してしまうことになったのはないでしょうか。

2001.05.28再読了

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