妖虫戦線1~4/山田正紀
1995年発表 C★NOVELS(中央公論社)
さて、第4巻まででデリヴィルスの起源の半分は明らかになったかと思いますが、残り半分にはおそらくハーンズ少尉らが砂漠で解放した邪悪の種子が関係していることは間違いないでしょう。ただ、この邪悪の種子がどのようなものかがほとんど明らかにされていないため、どのようにして電子環境内のデリヴィルスと結びつくようになったのかは、まったくわかりません。
ここで、ハーンズ少尉が大滝刑事に言った「あれを返してもらおう」・「あれはもともとおれたちのものなんだ」という言葉が大きな意味を持ってきます。ハーンズ少尉が求めるものが邪悪の種子に関わるものであることは明らかだと思われますし、それは大滝刑事が(彼が受け取ったか否かに関わらず)ハーンズ少尉に提供することができるものであるわけです。
それが何かは想像するしかできませんが、もしかしたら“物”ではなく人間、例えば大樹(=八咫彦)の身柄を指しているのかもしれません。そもそも、邪悪の種子を電子環境に持ち込んだのも大樹であり、その背後には大日妻教やアル・マフディーといった宗教団体が隠れているという可能性も高いと考えられます。
第4巻のラストや著者の言葉からは、物語の舞台がマレーシアのジャングルへと移ることが示唆されています。その一つの理由としては、ジャングルの多様な生態系が挙げられるのではないかと思います。つまり、電子環境から自然環境へと飛び出したデリヴィルスたちが、ジャングルの多様な生態系の中で競争に勝ち抜き、さらなる進化を遂げようとしているのではないでしょうか。
さらに進化したデリヴィルスたちが、日本で続々と誕生するドリーム・チャイルドとどのように関わってくるのか。それはもはや、推測することすらできません。
2000.09.03 / 2000.09.04 / 2000.09.04 / 2000.09.04読了