山田正紀ガイド

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はじめに

 山田正紀の著作は長編・短編集を合わせて140作余り(冊数にして180冊以上)を数え、しかも幅広い作風であるために、その全貌を把握することが困難になっている面もあります。そこで、これから山田正紀を読んでみようと思う方のために、簡単なガイドを作ってみました。
 具体的には、SF冒険/アクションミステリその他の四つに分類し、さらにその中でテーマ/サブジャンルごとに分類してあります(複数の分類にまたがる作品もいくつかあります)。また、短編集は独立させてあります。

 作品名は内容の紹介及び感想にリンクしています。また、このページでは最も入手しやすいと思われる版を記載してありますが、電子書籍では他の版が入手可能な場合もあります。

(注意)
 分類はあくまでも主観的なものです。また、記憶違い・思いこみ等により分類がおかしいものもあると思いますが、その点はご了承ください。


 なお、このページを作製するにあたって、N.Sanadaさん「山田正紀 著作リスト」を参考にさせていただきました(→残念ながらリンク切れです)。
 また、JINNさんの「鉄の城プロジェクト」→「不安と月」は山田正紀作品に関する情報が非常に充実していますので、ぜひご覧になってください。


SF

超越者(との対決)

 山田正紀の作品には、そのものずばりの『神狩り』など、“神”という絶対的超越者との対決という構図がよく見られます。また、『宝石泥棒』などでは超越者そのものだけでなく、秩序への挑戦という側面も見られます。
 なお、『神曲法廷』はミステリですが、“神の声”を聞き、それに翻弄される人物が主役となっています。

生命/進化

 吸血鬼伝説に新たな解釈を与えた『流氷民族』、特殊な生態系が構築された『崑崙遊撃隊』(特に後半)・『宝石泥棒』『超・博物誌』『オフェーリアの物語』、進化を正面から扱った『最後の敵』『クトゥルフ少女戦隊』、生と死をテーマとした『デッドソルジャーズ・ライヴ』、犬の視点で描かれたユニークな侵略ものの『宇宙犬ビーグル号の冒険』、電脳空間から出現する妖虫{デリヴィルス}を描いた『妖虫戦線』(未完)、怪獣小説『機械獣ヴァイブ』『未来獣ヴァイブ』などがあります。

悪夢/もう一つの現実

 現実が変容・崩壊し、その奥から姿を現す悪夢を描いた作品群です。

時間

 タイムパラドックスやタイムトラベルを扱うのではなく、時間の本質に迫ろうとする作品となっています。

宇宙

 ハードでスケールの大きな『デッド・エンド』、様々な生物を通じて間接的に宇宙を描いた『超・博物誌』、南海の小島に伝わる伝説と宇宙の意志をテーマとした『夢と闇の果て』、そして叙情的な『エンジェル・エコー』と、バラエティに富んでいます。

コンピュータ/サイバーパンク

 コンピュータによる管理社会を描いた『襲撃のメロディ』、コンピュータが生み出した思いもよらない産物を描いた『幻象機械』『螺旋の月』『エイダ』『妖虫戦線』、そしてサイバーパンク風の『ジュークボックス』『ジャグラー』『電脳少女』などがあります。

 

冒険/アクション

(国際)謀略

 自衛隊機争奪戦を描いた『謀殺のチェス・ゲーム』、サラリーマンたちが原子力発電所に潜入する『火神を盗め』、“東京ジャック”が発生する『三人の『馬』』『白の協奏曲』、東南アジアの小国で観光客が謀略に巻き込まれる『謀殺の弾丸特急』、カフカの未発表長編に隠された秘密を追う『第四の敵』、ハイジャック犯の思惑が焦点となる『謀殺の翼747』『復活するはわれにあり』などがあります。

秘境

 戦前の中国を舞台にした『崑崙遊撃隊』、海辺の小さな町が突然白亜紀の生態系に変化してしまった『竜の眠る浜辺』、怪僧ラスプーチンなども登場する『ツングース特命隊』、三十世紀の幻想的な世界での冒険を描いた『孔雀王』、カンボジアを舞台とした忍者たちの活躍を描いた『風の七人』、そして中東の砂漠を舞台とした『魔境密命隊』。また、『魔境物語』には中編二作が収録されています。

犯罪小説/コン・ゲーム

 山田正紀の作品における重要な要素である“ゲーム性”が最も強く表れた作品群で、頭脳と肉体を駆使して困難な標的に挑むものです。『贋作ゲーム』『五つの標的』は短編集、『ふしぎの国の犯罪者たち』は連作です。

仮想歴史

 石油ショックの時代を分岐点として構築された“幻代史”『顔のない神々』、巨大ロボットの登場するスチームパンク『機神兵団』、そして異色の架空戦記『影の艦隊』と、積極的に歴史を改変している作品群です。

アクション

 いずれも、ほぼ純粋にアクションを中心とした作品群です。『暗黒の序章』は永井豪とのコラボレーション(未完)『破壊軍団』『幽霊軍団』はシリーズです。

青春小説

 国家的陰謀に巻き込まれた一組の男女の恋と冒険を描いた『50億ドルの遺産』、突然の異常事態に陥った町で奮闘する若者たちを主役とする『竜の眠る浜辺』、海上都市にやってきた少年が成長し、やがて青春と決別する『アフロディーテ』、理想の実現にかける若者たちの姿を描いた『影の艦隊』、十四歳の少女を主役に据えた『雨の恐竜』など、青春をテーマとする作品です。

 

ミステリ

探偵小説

 呪師霊太郎を探偵役とした『人喰いの時代』、風水林太郎を探偵役とした重厚な『螺旋』、林太郎の妹・風水火那子が登場するやや軽めの『阿弥陀』、“神の声を聞く男”という大胆な設定の佐伯神一郎を主役とする『神曲法廷』、ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』の後日談にして金田一耕助が登場する『僧正の積木唄』、そして〈検閲図書館〉黙忌一郎が探偵役をつとめる『ミステリ・オペラ』などがあります。

その他

 『ブラックスワン』『おとり捜査官』(新本格作家絶賛!)などの本格ミステリから、『鏡の殺意』『赤い矢の女』などのサスペンス、あるいは歴史ミステリの『天正マクベス』にSFミステリの『ここから先は何もない』など、幅広い作風です。

 

その他

時代(伝奇)

 カンボジアへ渡った忍者たちの活躍を描いた『風の七人』、戦国版ヒロイック・ファンタジー風の『闇の太守』、架空の戦国時代を舞台としてさらに一歩ファンタジーへと踏み込んだ『仮面戦記』(未完)、江戸に出現する怪異を描く『天動説』『天保からくり船』、平安時代初期を舞台とした『延暦十三年のフランケンシュタイン』、山田風太郎の忍法帖をもとにした『神君幻法帖』『桜花忍法帖』、伝奇要素のない『早春賦』などがあります。

ホラー

 青山の街を舞台としたややエロティックな『魔空の迷宮』、同じく青山のインテリジェント・ビルを舞台とした『血と夜の饗宴』、看護婦と怪物の対決を描いたスプラッタの『ナース』、地下鉄にまつわる都市伝説を題材にした『サブウェイ』、主にクトゥルーものを集めた『銀の弾丸』などがあります。

 

短編集

 
 『地球軍独立戦闘隊』のようなSF短編集から、『私を猫と呼ばないで』のようなSF色のないもの、さらには『不可思議アイランド』のように(あえて)各ジャンルの作品を集めたものまで、様々です。

 


発表順リスト

 (おおよそ)作品発表順の感想リストです。

雑文

(架空)山田正紀選集 : 山田正紀作品をもとに、架空の叢書を作ってみるコーナーです(→申し訳ありませんが放置中です)。