魔空の迷宮/山田正紀
1986年発表 中公文庫 や24-3(中央公論社)
プロローグで、“わたしたちはまじめに働いていればいいのよ。そのうちになんかいいことあるわ”
という言葉を残して死んでいったソープ嬢に対して、武藤の“いいことなんかなかったな”とつぶやく場面が印象的です。
ラストも、いかにも山田正紀らしく救いのないものですが、この作品では一度期待させておいてから(第四章の最後、水野と章子が言葉を交わす場面)突き落とす形になっているため、救いのなさがいっそう際立っています。
なお、この作品では水野が主人公となっていますが、他の作品ではむしろ武藤のようなタイプの人物が主人公であることが多いように思います。
2000.09.13再読了