空相憶, 無計得傳消息。 天上嫦娥不識, 寄書何處覓。 新睡覺來無力, 不忍把伊書跡。 滿院落花春寂寂, 斷腸芳草碧。 |
謁金門
空しく 相ひ 憶ひ,
消息を 傳へ 得る 計 無し。
天上の 嫦娥も 識らずして,
書を寄さんとて 何處にか 覓(もと)むる。
新たに 睡りより 覺め來りて 力 無く,
伊(か)の 書跡を 把(も)たば 忍びず。
滿院の落花 春 寂寂として,
芳草の碧きに 斷腸す。
****************** ◎私感訳注: ※謁金門:詞牌の一。詞の形式名。双調。四十六字。換韻。詳しくは「構成について」を参照。この作品は『花間集』第三の第二首めになる。この作品は、作者の愛妾が、才媛であるということを聞きつけた蜀王の王建に、とられてしまった悲しみと追憶に浸って作ったものともいわれる。彼女は、この韋莊の詞を見て、食を断って死んだという。 ※空相憶:かいなく思い遣る。 ・空:むなしく。かいなく。 ・相憶:思い遣る。「相」動作を対象に及ぼす働きをする。 ※無計得傳消息:たよりを伝える方法が見つからない。 ・無計:方法がない。図りようがない。 ・得:える。 ・傳:つたえる。 ・消息:たより。しらせ。 ※天上嫦娥不識:天上界の仙女の嫦娥でも分からない。 ・天上:天の上の。天上界の。 ・嫦娥:月世界に棲むといわれる仙女。 ・不識:知らない。分からない。 ※寄書何處覓:手紙を出すのにも(宛先を)どこにもとめたらいいものやら。 ・寄書:手紙を出す。 ・何處:どこ。 ・覓:もとめる。 ※新睡覺來無力:午睡の一眠りから目覚めても、(元気にならないで)がっくりとして。 ・新睡:(午睡の)一眠り。 ・覺來:目覚めて。「來」…に なって。 ・無力:ぐったりとして。 ※不忍把伊書跡:彼女の書いた物を手に取り持てば、我慢ができなくなってくる。 ・不忍:我慢できない。忍ぶことができない。 ・把:手に取り持つ。 ・伊:これ。かれ。この。代詞。ここでは、彼女の意になる。 ・書跡:書いた物。手跡。筆跡。 ※滿院落花春寂寂:庭一面に花びらが散って、素晴らしい気節は過ぎ去った。春は寂しげである。 ・滿院:庭一杯。庭一面。「院」中庭。周りに建物がある庭。 ・落花:花びらが散っている。落花(の跡)。 *春は過ぎ去った、素晴らしい気節は過ぎ去った、ということ。 ・春寂寂:春は寂しげである。 ※斷腸芳草碧:春草の明るいあおさに、断腸の思いがする。 ・斷腸:非常な悲しみであることをいう。はらわたが絶たれる思いがする。・芳草:春草。 ・碧:あおい。みどり。 ◎ 構成について 四十五字 双調。仄韻一韻到底。韻式は「aaaa aaaa」。 韻脚は「憶息識覓力跡寂碧」で第十七部入声十一陌(十二錫)十三職。 ●,(仄韻) ●○○●。(仄韻), ●○○●●,(仄韻) ○○●●(仄韻), ●○●,(仄韻)。 ●○○●。(仄韻)。 ●○○●●,(仄韻)。 ○○●●。(仄韻) |
2003.12.2 |
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