李煜　長相思　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩

　長相思
liyu LiYu 漢詩

雲一，
玉一梭，
淡淡衫兒薄薄羅，
輕顰雙黛螺。

秋風多，
雨相和，
簾外芭蕉三兩，
夜長人奈何。

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長相思
　　　　　　　　　　　　　

雲　　一，
玉　　一梭，
淡淡たる　衫兒　　薄薄たる羅，
輕く顰（ひそ）む　　雙つの　黛螺（まゆ）。

秋風　多（さは）に，
雨　相ひ和し，
簾外　芭蕉　　三兩，
夜　長ければ　　人　奈何（いかん）せん。

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私感注釈

※長相思：詞牌の一。詳しくは下記「構成について」を参照。
※雲：雲なす髪。豊かな（女性の）髪の毛のこと。
※：髷を丸くゆったもの。わげ。女性の頭髪の一束ね。或いは、頭髪を束ねる青紫色の組み紐で作ったリボン、ヘアバンドの類。
※雲一：雲なす髪の髷。
※玉：玉（ぎょく）のように美しい。
※梭：（さ；suo1）ひ。機織りの「ひ（杼）」だが、ここでは「ひ」の形をしている玉かんざし。或いは、女性の美しい指の形容。
※玉一梭：玉でできた髪飾り。或いは、玉（ぎょく）のような、（麗しい女性の）指。
※淡淡：色が淡いこと。また、女性のうすぎぬの着物が体を動かすにつれて、着物の表面が、恰も水が揺れ動く（＝淡）が如くであるということ。
※衫兒：一重の上着。女性の短い袖の服。現代語では、シャツの類を云う。　・兒：名詞などの後に付く接尾辞。取り立てた意味はない。
※薄薄：（布地が）うすい。
※羅：うすぎぬ。
※淡淡衫兒薄薄羅：色があわく、軽やかに動く上着は、薄いうすぎぬ（でできている）。
※輕顰：少し（眉を）ひそめる。
※黛螺：まゆずみ。女性の（美しく化粧した）眉を云う。　・黛螺：まゆずみ。螺子黛のこと。これは、ペルシアに産したという。「螺」字を使うのは、その貝殻からまゆずみを取ったから。　・雙：二つ並んだ感じのものをいうときに使う。例えば、下図のような本サイト「詩詞世界」のトップページでは、一対の龍が玉を掴もうとしている。これなどは「雙龍戯珠」と謂える。その「雙」。
※輕顰雙黛螺：美しく化粧した眉を少しひそめる。
※秋風多：秋風が。
※雨相和：雨が混ざる。
※簾外：カーテンの（ついている窓の）外では。屋外では。
※芭蕉：バナナの樹。
※：＝。（量詞）「一本の木」（“一樹”）の「本」に当たる。現代では、普通「」の方を使う。
※三兩：二，三本。　「兩三」に同じ。「三兩」も「兩三」もどちらも白話では言う。「三兩」の方にしたのは、詞調と語調の関係で。「三兩」は○●○とすべきところで用い、「兩三」は●○○となるところで使う。　・兩：ふたつ。二個。白話では、「一個、二個…」「一本、二本」と数えられる物の場合は、“一個、兩個”と言う。
※簾外芭蕉三兩：屋外では（雨が降り出したので、）数本のバナナの葉に（雨が当たり、パラパラパラと、派手な音をたてだしたので）。
※夜長：秋の夜は長いので。
※奈何：どうしよう。いかにせん。どうしようもない。
※夜長人奈何：（芭蕉の葉の雨音で寝入れないが、秋の）夜は長いので、人は　どのようにすればよいのだろうか。

◎　構成について

　　双調。三十六字。平韻　一韻到底。韻式は「ＡＡＡ　ＡＡＡ」。赤の部分は、畳字。青の部分も、畳字にする。この作品の場合は少し異なり、第一句も押韻して、韻式は「ＡＡＡＡ　ＡＡＡＡ」となっている。また、畳字の様子も違う。他の長相思とも比較するとよい。　韻脚は「（）梭羅螺　（多）和何」で、第九部平声五歌。

●○，
●○。（韻）。
●○○●○，（韻）
○●○（韻）。

●○，
●○。（韻）。
●○○●○，（韻）
○●○（韻）。