蒼天已死
漢末 張角
蒼天已死,
黄天當立,
歳在甲子,
天下大吉。
**********************
。
蒼天 已に 死す
蒼天 已
(すで)
に 死し,
黄天 當
(まさ)
に 立つべし,
歳 甲子に 在りて,
天下 大吉なり。
******************
◎ 私感訳註:
※張角:歴史上有名な後漢末の黄巾の乱の首謀者。『後漢書・皇甫嵩朱列傳』によると、「
鉅鹿張角
自稱『大賢良師』,奉事
黄老
道,畜養弟子,跪拜首過,符水呪説以療病,病者頗愈,百姓信向之。……
角
因遣弟子八人使於四方,以善道教化天下,轉相誑惑。……遂置三十六方。方猶將軍號也。大方萬餘人,小方六七千,各立渠帥。訛言『蒼天已死,黄天當立,歳在甲子,天下大吉』。以白土書京城寺門及州郡官府,皆作『甲子』字。」とある。 鉅鹿の張角は、『大賢良師』と自称し、黄老道を奉じてつかえ、弟子を養成して蓄えていた。過(あやま)ちを自首して伏し拝むこと(自ら過ちを認める懺悔)や、護符や霊水や呪文でもって、病気の治療とした。病人はたちどころに癒り、人民はこれを信じるようになっていった…。という次第だ。その勢力が増大し、やがて、『蒼天已死,黄天當立,歳在甲子,天下大吉』のスローガンを都の役所の門などにチョークで『甲子』と落書きをしていった。
本ページでは、『後漢書・皇甫嵩朱列傳』の最初の部分にあるこのスローガンを採りあげた。
※蒼天已死:漢の天下は、すでに死んだ。 ・蒼天:青空、大空。天帝、造物主。ここでは(漢の)天下。 ・已:とっくに。すでに。 ・死:死んでいる。
※黄天當立:黄巾の勢力は蹶起し、交替すべき時になった。 ・黄天:前出、『後漢書・皇甫嵩朱列傳』では黄色の旗幟を使った事による。時の人は、これを「黄巾」とか「蛾賊」と謂った。「黄天」や「黄巾」と、「黄色」にこだわっているが、「黄」は,五行相生(
木
火
土
金
水
)で、漢の火徳(赤)に次いで生まれてくる、土徳の色の王朝を提示している。五行の色で表示することは、黄巾の乱に先立つ160年ほど前、前漢を倒した新の王莽に対しての農民の叛乱行動は、「赤眉の乱」という。火徳(赤)の漢を支持する、ということを明示して眉を赤く塗ったことに由来する。天理に則った次期正統王朝ということを主張する色である。 ・當:まさに…べし。 ・立:蹶起する。具体的な日も前出、『後漢書・皇甫嵩朱列傳』に残っている。歳次は甲子の、三月五日、城中と内外同時に蹶起することになっていた。
※歳在甲子:(蹶起する)歳次は甲子年で西暦184年になる。 ・歳在:歳次は、…で。 ・甲子:きのえね。干支による年月日等の表記
で、ここは歳次なので年表で確かめると、西暦184年(後漢霊帝中平元年)になる。甲子は、歳次でいうと60年毎に改まる干支のトップ(
甲子
→乙丑→丙寅…丁卯…)であり、「新しい歴史が始まる」「革新年」という雰囲気がある。
※天下大吉:天下は、大いにめでたくおさまる。 ・天下:世の中。天下。 ・大吉:大いにおめでたい。蛇足になるが、宗教がらみの叛乱は、この黄巾の乱の外、紅巾の乱、白蓮教徒の乱、太平天国の乱、義和団事件、法輪功と、多彩。
◎ 構成について
押韻している。『詩經』などに見える交韻
になる。古い押韻形式。元曲にある交韻(換韻)とは大きく異なる。韻式は「abab」。韻脚は「
死
立
子
吉
」で、平水韻でいえば上声四紙と入声四質等。この作品の平仄は、次の通り。
○○●
●
,(a韻)
○○○
●
。(b韻)
●●●
●
,(a韻)
○○●
●
。(b韻)
2003.11.19
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