詩詞世界　碇豊長の漢詩　秋瑾詩詞　梅

　　　梅

本是瑤臺第一枝，
謫來塵世具芳姿。
如何不遇林和靖？
飄泊天涯更水涯。

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梅

もとこれ　　やうだい　　　　　だいいっし　　　　　　　　　　　　　
本是　瑤臺の　　第一枝，
たく　　　きた　　　　　　ぢんせ　　　　　　　はうし　　　あらは
謫せ來りて　塵世に　　芳姿を具す。
いかん　　　　　　　　　　　　　りんわせい　　　　　あ
如何せん？　　林和靖に　遇はざれば，
てんがい　　ひゃうはく　　　　さら　　　　すいがい
天涯を飄泊し　　更に　水涯。

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私感注釈

◎　この詩は、金銭で官位を買う、成金趣味で俗っぽい夫に嫁いだ不遇感と、自分の結婚生活に対する不満を訴えたものである。
※梅：これは秋瑾自身のことでもある。梅は歳寒三友の一で、逆境でも花を咲かせる凛々しさがある。後出の林和靖は、梅を妻として過ごした人物で、それとも合わせて使っている。
※本是：もと　これ。本来は…である。　
※瑤臺：西王母の居るところ。仙境。また転じて月世界。ここでは、秋瑾の出身が文化的に高い門地から出ている事を指す。
※第一枝：第一番目の花枝。これは秋瑾自身を指しており、高い教養と文化水準を誇っている。
※謫：降ろされる。高い位置から流されること。秋瑾の夫の家王家は、金持ちだったが、秋瑾にとっては、降嫁した感じている。夫と夫の家に対する不満をこの語で表している。
※謫來：この「來」は、「いく・くる」の「くる」ではない。動きの方向を示している。
※塵世：俗世間。ここでは、夫の家を初めとする、銅（銭）臭のする金銭第一の俗世間を指す。
※具：あらわす。具現する。
※芳姿：芳しい姿。梅にかこつけた秋瑾自身のことでもある。
※如何：いかん。何如とは意味が違うときがある。
※不遇：普通は、世に入れられない、であるが、ここでは、秋瑾が林和靖のような風雅を解する夫に巡り遇えなかったことを云う。遇は、めぐり会う。出会う。
※林和靖：北宋の詩人。名は逋。銭塘の人。名利を求めず、杭州西湖の孤山に梅を妻とし、鶴を子として、隠棲していた。和靖と仁宗よりの諡をもらう。ここでは、風雅を解する、高い教養のある文人の意で使われている。
※飄泊：さすらう。これも秋瑾自身の思いをいっている。
※天涯：空の果て。地の果て。
※更：。これは去声
※水涯：汀。渚。
※天涯更水涯：天の果て、更に、地の果てまでをもさすらうこと。

◎　構成：
　　　　七言絶句　仄起式。
　平仄は次のようになっている。
　　　　●●○○●●○，
　　　　○○○●●○○。　
　　　　○○●●○○●，　
　　　　○●○○●●○，
　　
正確に作られている。

　押韻は韻で、「枝」「姿」は支韻。「涯」は佳韻（がい）と支韻（ぎ）の両韻。