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蘆花深澤靜垂綸,
月夕煙朝幾十春。
自説孤舟寒水畔,
不曾逢着獨醒人。
漁父に贈る
蘆花 深き澤に 靜かに綸(いと)を垂れ,
月ある夕 煙れる朝 幾十の春。
自ら説(い)ふ: 孤舟 寒水の 畔に,
曾て 逢着せず 獨り醒むる人に と。
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◎ 私感註釈
※贈漁父:老漁師に贈る。、世の大勢に順応することを説いた人に贈る。『楚辭』の「漁父」を踏まえている。「屈原既放 ,游於江潭,行吟澤畔,顏色憔悴,形容枯槁。漁父見而問之曰:「子非三閭大夫與?何故至於斯?」屈原曰:「舉世皆濁我獨C,衆人皆醉我獨醒,是以見放。」「漁父 曰く:『聖人は 物に凝滯せず,而して 能く世と 推移す。 世人 皆 濁らば, 何ぞ 其の泥を(にご)して 而て 其の波を揚げざる?
衆人 皆 醉はば, 何ぞ 其の糟(かす)を餔(くら)ひて 其の(しる)を(すす)らざる? 何の故に 深思 高舉して,自(みづか)ら放たれしむか と?』」という風に、世の大勢に順応することを説いた人。
※蘆花深澤靜垂綸,蘆の花が深く茂っている澤で、靜かに釣り糸を垂れて。 ・綸:ここでは、釣り糸の意。
※月夕煙朝幾十春。月の出る夕方まで、もやの立ちこめる朝(の一日中)、幾十年の間。この何十年もの間ずうっと。 ・幾十春:幾十年。
※自説孤舟寒水畔,自ら云うことには、ぽつんとひとつだけあるこの舟で寒ざむしい川辺畔では。 ・説:いう。現代語では普通「言う」は“説”を使う。
※不曾逢着獨醒人。今までに、屈原のような独り醒めた人には、出逢ったことがない。 ・不曾:今まで…したことがない。 ・逢着:出逢う。ほうちゃく。「着」は接尾辞。=逢著(ほうちゃく)。現代語でも、意味はやや異なってくるが、よく使う助辞。中国では、“着”を、台湾では“著”を多用する。 ・獨醒人:上出の「衆人皆醉我獨醒」と言った屈原のこと。
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◎ 構成について
七言絶句。平起。韻式は、「AAA」。韻脚は「綸春人」で、平水韻上平十一真。次の平仄はこの作品のもの。
○○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2003. 2.10完 |
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