******
春眠不覺曉,
處處聞啼鳥。
夜來風雨聲,
花落知多少。
春曉
春眠 曉を 覺えず,
處處 啼鳥を 聞く。
夜來 風雨の聲,
花 落つること 知りぬ 多少ぞ。
*****************
◎ 私感註釈
※孟浩然:盛唐の詩人。689年(嗣聖六年)〜740年(開元二十八年)襄陽の人。官途に不遇で、郷里の鹿門山に隠れ棲んだ。山水詩に長じている。
※春暁:春の夜明け。詩人が春の朝に目覚めていく順に、淡々と詠われている。昨夜の雨と、今朝の晴れあがった光景の比較の詩詞には、晩唐〜・韋莊の『晏起』「爾來中酒起常遲,臥看南山改舊詩。開戸日高春寂寂,數聲啼鳥上花枝。」や、北宋・秦觀の『春日』「一夕輕雷落萬絲,霽光浮瓦碧參差。有情芍藥含春涙,無力薔薇臥曉枝。」や、両宋・李清照の『如夢令』「昨夜雨疏風驟,濃睡不消殘酒。試問卷簾人,却道海棠依舊。知否?知否?應是鵠紅痩。」等がある。
※春眠不覚暁:春の眠りは(心地よいので、ついつい寝坊をしてしまい)明け方が分からずに眠り呆けてしまった。「春眠不覚暁」(「○○●●●」)の句は仄三連の拗体の例としてしばしば挙げられるところ。この句「春眠不覚暁」の意が、一般的に日中で解釈が微妙に異なっているようだ。「覚」の意の解釈「おぼえる」(=感知する)・「さとる」・「さめる」(=覚醒する)また、現代中国語で「おぼえる」・「さとる」・「さめる」また、「ねむる」(=睡眠する)と、多義に亘ること、また、日本では伝統的にこの句を「春眠 暁を覚 えず」と読み下すことに因る。流布されている中国語的な解釈に基づいて、敢えて読み下すとすれば「春眠 暁に覚 めず」(春の眠りは(心地よいので、)明け方に目覚めることはない)、となろうか。まあ、結局は同じなのだが……。(このページでのこの部分の解釈は、両者を勘案したものを記した)。 ・春眠:春の季節の睡眠。 ・不覺曉:日の出の時を覚えていない。寝坊をすること。 ・覺:〔かく;jue2●〕…を覚えている。知っている。気づく。蛇足になるが、「覺」〔かう;jiao4〕には、「目覚める」の意がある。日中両国語では、ずれがある(現代語では「眠る」)ものの、どちらにもある。しかし、ここは、両国とも前者「覺:〔かく;jue2●〕…を覚えている。知っている。」の意で理解され、その意味の音で読まれている。 ・曉:あかつき。あけぼの。夜明け。
※処処聞啼鳥:方々から鳥のさえずりが聞こえてくる。 ・處處:ところどころ。ほうぼう。いたるところ。 ・聞:きこえる。聞こえてくる。自動詞のような場合が比較的多い。蛇足になるが、「きく」の場合は、「聽」が多い。 ・啼鳥:鳴く鳥。さえずる鳥。
※夜來風雨声:昨夜は、雨風の音(が激しかったが)。 ・夜來:昨夜。夜間。また、昨夜来の意。その場合、「-來」は「〜から」の意。 ・風雨聲:雨風の音。
※花落知多少:花は、さぞたくさん散ったことだろう。どれくらい散ったことだろうか。多いことだろう。 *「花 落つること知んぬ 多少ぞ」とも読み下す。蛇足になるが、「知んぬ」は国文法で「知る(四段活用)の語幹」+ん(音便)+ぬ(完了の助動詞)なのか? ・花落:花が散る。 ・知:わかる。この語で、作者の推量を表す。 ・多少:どれほど、どれくらい。多い。少ない。
***********
◎ 構成について
平起。一韻到底。韻式は、「aaa」上声韻。韻脚は「曉鳥少」で、平水韻上声十七篠。次の平仄はこの作品のもの。
○○●●●,(韻)
●●○○●。(韻)
●○○●○,
○●○○●。(韻)
2004.4. 6完 2011.4.13補 2011.6.13 2015.9.17 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |
メール |
トップ |