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                                              白楽天白居易
      臨水坐

                 白居易

昔爲東掖垣中客,
今作西方社内人。
手把楊枝臨水坐,
閑思往事似前身。


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水に臨みて 坐す
                       
昔は 東掖
(とうえき) 垣中(ゑんちう)の客と 爲(な)り,
今は 西方 社内の人と 作
(な)る。
手に 楊枝を把
(と)りて  水に 臨みて 坐し,
(しづ)かに 往事を 思へば  前身に 似たり。

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◎ 私感註釈

※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。

※臨水坐:渓流に面して、(静かに)すわ(ってい)る。 *伊勢丘人先生より仏教関係の事柄や白居易の官職について、懇切なご教示を賜って、このページを書きました。

※昔爲東掖垣中客:昔は宮門の宮門の左(東)脇にある役所で、東宮左賛善大夫(官僚)として勤めていたことがあった。 *昔は官僚として世俗の権力にも関わり、世の中を動かしてきたが。 ・昔爲:昔は……であった。・東掖垣:宮門の東わきにある役所。宮門の左脇にある役所で、作者がかつて東宮左賛善大夫として勤めていたところ。 ・掖垣:宮中正殿のそばのかきね。 ・客:(一時的にいる)ひと。

※今作西方社内人:今は仏教徒結社の一員となっている。 *今では仏教の結社の一員となって、「死」と向かい合っている。 ・今作:今は……となる。 ・西方:中国から見てインドの方角。仏教を指す。『西遊記』の「西」のこと。西方浄土。 ・社内人:信者。帰依者。仏教のなかま。仏教徒の結社。

※手把楊枝臨水坐:手にヤナギの枝を取り持って、病を癒す楊柳観音のようになって水辺にすわっていて。 *左遷された境遇にある白居易は、仏教の観音様に憧れ、癒しを求めていたのか。 ・手:手に。 ・把:(手に)取り持つ。 ・楊枝:ヤナギの枝。ここでのヤナギの枝の意味は、楊柳観音のヤナギを指す。楊柳観音は、三十三観音の一つで、種々の病難の消除を本誓とする。右手に楊柳枝をとり、左手を左乳上に当てるとされる。 ・臨水坐:水辺にすわる。

※閑思往事似前身:しずかに思えば、過ぎ去った昔の事は、(遠い遠い昔のことで、恰も)この世に生まれる前の時のことのようである。 *「身」の語は、意味の上でやや、ひっかかるが、韻脚でもある。 ・閑思:しずかに思う。 ・往事:昔。過ぎ去った昔の事。 ・似:似ている。 ・前身:この世に生まれる前の身。仏教用語。

               ***********




◎ 構成について

仄起。一韻到底。韻式は、「AA」。韻脚は「人身」で、平水韻上平十一真。次の平仄はこの作品のもの。

●○○●○○●,
○●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
○○●●●○○。(韻)
2004.2.12
     2.13

漢詩 填詞 詩餘 詩余 

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