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余夙慕陶淵明爲人,往歳渭上閑居,嘗有效陶體詩十六首。今遊廬山,經柴桑,過栗里,思其人,訪其宅,不能默默,又題此詩云。
陶公舊宅を 訪ぬ 序
余 夙(つと)に 陶淵明の 人と爲(なり)を 慕ひ, 往歳 渭上に 閑居せしとき, 嘗(かつ)て 陶體の詩に效(なら)へるもの 十六首 有り。 今 廬山に遊び,柴桑を經(へ),栗里に過り,其の人を思ひ, 其の宅を訪(たづ)ね,默默たること能(あた)はずして, 又た 此の詩を題すと 云ふ。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。
※訪陶公舊宅:陶淵明公の旧居を訪れる。当時白居易は、陶淵明の故郷である柴桑、栗里のある九江郡の司馬に任じられていた。白居易の境涯は、陶潜の生き方に共鳴するところもあって、陶淵明を慕って歌ったものや作風を真似たものも多い。なお、このページは、その序文になる。『訪陶公舊宅并序』の序。詩の前半はこちら。 後半は、こちら。
※余夙慕陶淵明爲人:わたしは、早くから陶潜のひととなりを敬慕していて。 ・余:わたし。 ・夙:つと(に)。早くから。古く(から)。 ・慕:敬慕する。したう。 ・爲人:ひととなり。
※往歳渭上閑居:昔(五年ほど前)、渭水のほとりに閑居したことがあった。 ・往歳:往年。昔。実際は五年ほど前。 ・渭上:渭水のほとり。長安の北側を東流して黄河に注ぐ。『效陶潛體詩十六首』の序にも「余退居渭上,杜門不出。」とある。 ・閑居:閑でいる。静かな土地にいる。
※嘗有效陶體詩十六首:(以前渭上に閑居したときに)陶淵明風の作品十六首を作ってみたことがある。 ・嘗有:以前に(陶淵明風の作品を)作ってみたことがある。 ・效陶體詩:陶淵明風の作品。後出の『效陶潛體詩』十六首を始めとした、一連の作品がある。白居易が陶淵明の作風や生き方をしたって作り、語彙や内容が、陶潛風になっている。
※今遊廬山:今回、盧山に旅をした。 ・今:今回。 ・遊:見物のため他国に出てゆく。旅をする。遊覧する。 ・廬山:〔ろざん;lu2shan1〕江西省の九江市の南にある。陶潛は南山と詠ったこともある。陶淵明の隠棲した近くにある山。。
※經柴桑:陶淵明の故地の柴桑を通って。 ・經:…をへる。 ・柴桑:地名。〔さいさう;chai2cang1〕陶淵明の故郷の一。潯陽(現・江西省北部にある九江市)の西南。 ・古村落:古くからある村々。
※過栗里:陶淵明の故地の栗里に来て。 ・過:…に行く。…によぎる。…を通り過ぎる。 ・栗里:地名。〔りつり;li4li3〕陶淵明の故郷の一で、潯陽(現・江西省北部にある九江市)附近。
※思其人:、陶潛その人を思いしのぶ。 ・思:思いしのぶ。 ・其人:ここでは、陶潛その人のことになる。
※訪其宅:陶潜の旧宅を訪ずれる。 ・訪:おとずれる。 ・其宅:陶潜の旧宅になる。
※不能默默:黙り込んでいることができない(ので)。 ・不能:…とすることができない。 ・默默:黙り込んでいるさま。
※又題此詩云:(…ので、)この『訪陶公舊宅』の詩を書きしるした次第である。 ・又:さらに。 ・題:(詩文を)書きしるす。しるす。「題……壁」とする場合は、壁に書きしるしたことになる。 ・此詩:『訪陶公舊宅』のこと。 ・云:…とこのようにいう。…という。…とのことなり。…なりとぞ。前の文を収めることば。断定を避けた言い方。伝聞を表す。文末の助詞になる。『商山路有感』の序でも、「長慶二年七月三十日,題於内ク縣南亭云爾。」という風に使っている。
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◎ 構成について
『訪陶公舊宅』の序文で、散文。
2004.2.15 2.16 2.17完 |
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