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霜草蒼蒼蟲切切,
村南村北行人絶。
獨出前門望野田,
月明蕎麥花如雪。
村夜
霜草(さうさう) 蒼蒼(さうさう)として 蟲 切切たり,
村南 村北 行人 絶(た)ゆ。
獨(ひと)り 前門に出でて 野田を 望めば,
月明の 蕎麥(けうばく) 花は 雪の如し。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。
※村夜:村里の夜。 *村里の月明の夜の情景。白居易の絶句形式での入声韻は珍しい。
※霜草蒼蒼蟲切切:しもの降りた草は、(まだ)青々としており、秋の虫の(鳴き声は)胸に迫まってくる。或いは、しもの降りた草は、白髪交じりの頭髪のように老いた姿をして、秋の虫の(鳴き声は)もの悲しげで胸に迫まってくる。 ・霜草:〔さうさう;shuang1cao3○●両韻〕しもの降りた草。晩秋初冬の屋外のさま。蛇足になるが、「霜葉」は紅葉。 ・蒼蒼:〔さうさうcang1cang1○○両韻〕あおあおとしたさま。草木があおあおと茂るさま。また、老いたさま。頭髪の白髪交じりのさま。ここでは、霜の降りた草のようす。 ・蟲:ここでは、秋の虫のこと。 ・切切:胸に迫るように悲しいさま。思いや情が強く胸に迫るさま。また、心がこもっているさま。ねんごろなさま。叮嚀なさま。
※村南村北行人絶:村のどこも、道行く人は途絶えて(静まりかえっている)。 ・村南村北:村のあちらこちら。村のどこでも。 ・行人:道行く人。旅人。 ・絶:たえる。途絶える。
※獨出前門望野田:ひとりだけで、正門外に出て、田野を遠くまで見わたせば。 ・獨出前門:ひとりだけで、正門外に出て。 ・前門:表門。正門。 ・望:遠くまで見わたす。のぞむ。未然形は「のぞま(ば)」、已然形は「のぞめ(ば)」。伝統的な「已然形+レバ則」に準ずれば「のぞめ(ば)」。 ・野田:田野。
※月明蕎麥花如雪:月明かりの下に、ソバの(白い小さな)花が(畑一面を覆い、そのため、)雪のように真っ白に輝く畑が続いている。 ・月明:月明かりの下(で)。 ・蕎麥:〔けうばく;qiao2mai4○●〕そば。 *ここの描写を後世、日本の広瀬旭荘が『阿部野』で「興亡千古泣英雄,虎鬪龍爭夢已空。欲問南朝忠義墓,蕎花秋仆野田風。」としている。 ・花:(ソバの)花。白い小さな花を畑一面に著ける。そのため、白く輝く畑が続いているように見える。開花時期は秋。 ・如雪:雪のように真っ白である。
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◎ 構成について
韻式は「aaa」。韻脚は「切絶雪」で、平水韻入声九屑。次の平仄はこの作品のもの。
○●○○○●●,(韻)
○○○●○○●。(韻)
●●○○◎●○,
●○○●○○●。(韻)
2005.3.12 3.13完 2016.7.13補 |
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