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       題慈恩塔

                 荊叔
漢國山河在,
秦陵草樹深。
暮雲千里色,
無處不傷心。


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慈恩塔に題す
漢國  山河 在り,
秦陵  草樹 深し。
暮雲  千里の色,
處として  心を 傷ましめざるは 無し。

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◎ 私感註釈

※荊叔:唐代の詩人。おそらく杜甫よりも先の時代の人物。

※題慈恩塔:慈恩塔(に上って)詩を作る。 ・慈恩塔:慈恩寺境内にある大雁塔のこと。長安(現・西安)城南三キロメートルのところにある。中唐・白居易に『三月三十日題慈恩寺』「慈恩春色今朝盡,盡日裴回倚寺門。惆悵春歸留不得,紫藤花下漸黄昏。」がある。

※漢国山河在:国都長安は、山河がある。 *「
漢國山河在,秦陵草樹深。」は杜甫の『春望』「山河在,城春草木深感時花濺涙,恨別鳥驚心。烽火連三月,家書抵萬金。白頭掻更短,渾欲不勝簪。」 の用法の先行形になろうか。 ・漢国:漢の国都長安。現在のことをいうのを憚り「漢」としている。 ・山河:(自然の)山河。 ・在:存在している。そこにある。

※秦陵草樹深:秦・始皇の陵には、草木が生い茂っている。 ・秦陵:秦の始皇帝の陵。長安の東五〇キロメートルのところにある。秦の兵馬俑で有名。 ・草樹:草木。 ・深:生い茂っている。

※暮雲千里色:暮色が千里(の遠きに亘り)。 ・暮雲:夕暮れ時の雲。夕焼け雲。 ・千里:遙かな空間、距離をいう。 ・色:おもむき。ようす。きざし。

※無処不傷心:心をいためないところは、ない。 ・無處:…ところがない。 ・無…不…:…しない…はない。…しない者…はいない。全て…である。(結果として)二重否定。中唐・劉禹錫の『元和十一年自朗州召至京戲贈看花ゥ君子』に「紫陌紅塵拂面來,
道看花回。玄都觀裏桃千樹,盡是劉郎去後栽。」とあり、唐・韓翃の『寒食』に「春城飛花,寒食東風御柳斜。日暮漢宮傳蝋燭,輕煙散入五侯家。」とある。 ・傷心:心をいためる。

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◎ 構成について

韻式は「AA」。韻脚は「深心」で、平水韻下平十二侵。次の平仄はこの作品のもの。

●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
○●●○○。(韻)
2005.3.12

漢詩 填詞 詩餘 詩余 

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