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紅豆生南國,
春來發幾枝。
願君多采擷。
此物最相思。
相思
紅豆 南國に 生じ,
春 來りて 幾枝か 發(ひら)く。
願はくは 君 多く 采擷(さいけつ)せよ。
此の物 最も 相い思はす。
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紅豆。写真撮影:志遠氏。福建省寧徳市宝橋村に、この樹は生えているという。その地には陸游も曾て訪れたことがあるという。(07.9.4) 電池は大きさの比較のため。 これがその村に生えている樹。高さは20メートル程になるという。 写真を更にいただいた。(08.8.21)
◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?〜761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※相思:相愛のことであり、紅豆という果実、また、アズキのことでもある。紅豆は俗に「相思子」ともいう。紅豆を詠いながら、恋情を陳べている。また人と人との情誼を表している。
※紅豆生南國:「相思子(=思いを寄せる)」と呼ばれる紅豆は、南国に生まれ。 ・紅豆:紅い色の木の実。また、アズキ。相愛をいう。前出「相思子」の謂。 *「紅豆」について、福建省の読者よりお便りと写真をいただきました。それに拠りますと、「紅豆はアズキではなくて、豆の樹になる豆です。福建省の寧徳市宝橋村には、20メートルにもなる一株の大きな「相思樹」があり、毎年、紅豆をつけています。紅豆は、とても綺麗な赤い色の果実で(果実ではあるものの食べられませんが)、皮が硬くて色が何時までも褪せません。そのために恋の象徴とされてきたのでないかと思っています。紅豆を石にこすりつけて磨いていて、豆が熱くなっても、皮は破れません。その硬さは、想像できるでしょうか。王維の『相思』は恋情だけではなく、人と人の情誼を詠う詩だと主張する人もいるようです。豆はエンドウマメのように莢(さや)に入っており、一つの莢(さや)に直径1センチメートルほどの紅豆が普通は一つ、場合によっては二つか三つ入っています。木の下で拾う時、多くは莢と豆が既に離れて、土や草の中から紅豆を拾います 」とのことで、千載不磨、不変顔色を象徴する赤い果実ということ。 ・生:産出する。 ・南國:南方の地方。紅豆は嶺南の広東、広西に産することに基づく。
※春來發幾枝:春になると何本かの枝に花を著ける。 ・春來:春になる。「秋來」ともする。 ・發幾枝:「發故枝」ともする。
※願君多采擷:あなたにお願いだから、どうかたくさん摘み取ってほしい。 ・願君:あなたが…とあるように願う。願望の表現。 ・多:たくさん(摘み取る)⇒たくさん(思いを寄せてほしい)ということ。 ・采擷〔さいけつ;cai3xie2●●〕摘み取る。摘(つ)む。
※此物最相思:「相思子(=思いを寄せる)」と呼ばれるアズキは、一番に慕わしいものだ。 ・此物:この物。ここでは、紅豆のことをいう。 ・最:一番に。非常に。とりわけ。たいそう。もっとも。 ・相思:慕情が募っていくこと。慕わしい。思いを寄せる。ここでは必ずしも、互いに思慕することを意味しない。「相−」は動作が対象に及ぶときの表現。「…ていく。…てくる」。ここは「相互に」の意はない。
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◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「枝思」で、平水韻上平四支。次の平仄はこの作品のもの。
○●○○●,
●●●○○。(韻)
○●○○●,
○○○●○。(韻)
2005.9.27 9.28完 2007.9. 4補(紅豆) 9. 6 9.10照 2008.8.21写真追加 2017.5.24 |
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