最新の科技 長橋を架け、
此に虚途と作って ことさらに寂寥。
往昔の空論 水泡に帰し、
方今の現実 干潮の若し。
千金の利息 年々に殖え、
一日の奔車 歳々に消ゆ。
収支を推理する 忘刻の裡、
前路を杞憂して 思ひ遙遙。
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・架橋: 明石海峡大橋。
・科技: 科学技術。
・虚途: 車の走っていないガラガラに空いている道。(造語)
・千金: 建設費約5000億円。
・遙遙: 心の不安なさま。
※ 前作は架橋直後の作。この二年後一度この橋を渡って、その際には我国の架橋技術に感動したが、前作には一抹の不安を尾聯に込めていた。
人間社会とは皮肉なもので、交通が便利になれば行楽客は、行楽地には宿泊しなくなった。また通行する車の台数も机上の空論で伸びないようである。
良い点をあげれば、四国および淡路島から本州への物流がスムーズになったことであろうか。
※『明石海峡大橋』参照
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