心緒萬端書兩紙,
欲封重讀意遲遲。
五聲宮漏初鳴後,
一點窗燈欲滅時。
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禁中 夜書を作りて 元九に與ふ
心緒(しんしょ) 萬端 書 兩紙,
封(ふう)ぜんと欲して 重ねて讀み 意 遲遲たり。
五聲の宮漏(きゅうろう) 初めて鳴りて後,
一點の窗燈(さうとう) 滅せんと欲するの時。
◎ 私感註釈 *****************
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※禁中夜作書與元九:禁裏で宿直をした夜に手紙を書いて、元に出した。 ・禁中:禁裏。宮中。 ・書:手紙。名詞。 ・元九:白居易の親友の名。元。九は排行。
※心緒萬端書兩紙:心の中で思っているさまざまの事を、手紙二枚の紙(にしたためた)。 *「心緒は萬端である(が)」それにひき比べ「書は兩紙である」。 ・心緒:考えのすじみち。心の動くいとぐち。心の中で思っている内容。 ・萬端:すべての事柄。さまざまの物事。 ・書:手紙。名詞。ここでの「書」の意は、「封書、書翰」といった名詞なのか、「書く」という動詞なのか紛らわしいが、「心緒萬端書兩紙」という句の構成から見ると前者の意で、名詞。「心緒萬端 書兩紙」「心緒は萬端であって、書は兩紙である」といった句中の対。 ・兩紙:二枚の紙。
※欲封重讀意遲遲:手紙に封をしようとして、また読み直して、こころはぐずぐずして、なかなか進まない。 ・欲:…ようとする。 ・封:手紙の封緘をする。 ・重讀:再度読む。重ねて読む。 ・意:心。思い。 ・遲遲:ぐずぐずする。なかなか進まない。ゆっくり進むさま。物事が進まないさま。
※五聲宮漏初鳴後:(手紙を書き上げて封をしようか、どうしようかと迷っていたのは)宮中の時計が五更(午前四時)を最初に告げた後のことであって。 ・宮漏:宮中の時計。宮中の漏刻。 ・初鳴:(その日の)初めての合図。 ・五聲:五更。午前四時ごろ。 ・宮漏:宮中の時計。宮中の漏刻。 ・初鳴後:「初明後」ともする。「鳴」「明」は同音。
※一點窗燈欲滅時:ぽつんと灯(とも)っていた窓辺の灯(あか)りが(油が尽きて)消えようとしていた時だった。 ・一點:ひとつ。 ・窗燈:窓辺のともしび。 ・滅:(油が無くなって)消える。
◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「遲時」で、平水韻上平四支。平仄はこの作品のもの。
○●○○○●●,
●○○●●○○。(韻)
●○○●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2007.3.19 3.20 |
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