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      宿疎陂驛 
                 王周

 秋染棠梨葉半紅,
 荊州東望草平空。
 誰知孤宦天涯意,
 微雨瀟瀟古驛中。


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疎陂驛に宿す
                       
秋は 棠梨を 染めて  葉 半ば 紅なり,
荊州 東に望めば  草 空に平かなり。
誰か知らん 孤宦  天涯の意を,
微雨 瀟瀟たり  古驛の中。


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◎ 私感註釈

※王周:晩唐の詩人。

※宿疎陂驛:疎陂驛に泊まる。 ・宿:宿(とま)る。宿泊する。 ・疎陂驛:〔そは-えき;Shu1(Su1)po1(pi2) yi4〕宿場の名。詳細不明。詩句中「荊州東望…」とあるので荊州を中心に調べた。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)27−28ページ「荊湖南路荊湖北路」では見つからなかった。

※秋染棠梨葉半紅:秋の季節は、ヤマカイドウの葉を半ば紅くさせるところまでになってきた。 ・棠梨:〔たうり;tang2li2○○〕ヤマカイドウ。ヤマナシ。カラナシ。 ・半:なかば。 ・紅:紅くなる。色づく。

※荊州東望草平空:東の方にある荊州を望み見ると、草は空と一つになって平らかである。 ・荊州:〔けいしう;Jing1zhou1○○〕湖北・湖南の州名。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)57−58ページ「江南西道」では、洞庭湖北100キロメートルの長江沿いの街。江陵の東、現・沙市市。 ・東望:「荊州東望」:東の方にある荊州を望み見る。また、荊州より東の方を望み見る(作者は荊州にいる)。ここは、前者の意でないと通じない。「東望荊州」:東の方にある荊州を望み見る(作者は荊州の西にいる)。ただ、このように見ると詩意が通じない。この詩は作者疏陂駅の宿舎に泊まったとき、地の涯に荊州の姿を認め、天涯の客となった感慨に耽っているわけなので、「東望荊州」とすべきところを平仄上や表現上「荊州東望」として、その意は東の方にある荊州を望み見る。 ・平空:空と一つになって平らかであるさま。

※誰知孤宦天涯意:一体誰が知っていようか(わたしが)ひとりぼっちで役人として仕えて、地の涯にいる思いを。 ・誰知:誰が知ろうか、誰も知るまい。 ・孤宦:〔こくゎん;gu1huan4○●〕ひとりぼっちで役人として仕える。 ・天涯:空のはて。きわめて遠いところのたとえ。 ・意:思い。こころ。

※微雨瀟瀟古驛中:小雨がしとしとと寂しげに、古びた駅舎に降りかかっている。 ・微雨:こさめ。細雨。 ・瀟瀟:〔せうせう;xiao1xiao1○○〕雨が寂しく降るさま。また、風雨の激しいさま。ここは、前者の意。 ・古驛:古びた宿場。疏陂驛のことになる。

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◎ 構成について

韻式は「AAA」。韻脚は「紅空中」で、平水韻上平一東。次の平仄はこの作品のもの。

○●○○●●○(韻),
○○○◎●○○。(韻)
○○○●○○●,
○●○○●●○。(韻)

2007.8.9

漢詩 填詞 詩餘 詩余 

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