遊人五陵去,
寶劍直千金。
分手脱相贈,
平生一片心。
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朱大の秦に入るを 送る
遊人 五陵に 去る,
寶劍 直(あたひ) 千金。
手を分つとき 脱して 相ひ贈る,
平生 一片の心。
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◎ 私感註釈
※孟浩然:盛唐の詩人。689年(嗣聖六年)〜740年(開元二十八年)襄陽の人。官途に不遇で、郷里の鹿門山に隠れ棲んだ。山水詩に長じている。
※送朱大入秦:朱家の長男が旧秦地である長安に行くのを送別する。 ・送:見送る。送別する。 ・朱大:朱家の長男。「大」は排行で長男の意。 ・入秦:長安に行く。旧秦地である関中に行く。陝西南部に入る。東晉・陶潛の『詠荊軻』に「燕丹善養士,志在報強。招集百夫良,歳暮得荊卿。君子死知己,提劒出燕京。素驥鳴廣陌,慷慨送我行。雄髮指危冠,猛氣衝長纓。飮餞易水上,四座列群英。漸離撃悲筑,宋意唱高聲。蕭蕭哀風逝,淡淡寒波生。商音更流涕,酎t壯士驚。心知去不歸,且有後世名。登車何時顧,飛蓋入秦庭。」 とある。
※遊人五陵去:侠客である(あなたは長安の游侠の徒の多く住む)五陵に行く(という) ・遊人:侠客。遊客。職業を持たないで遊んでいる人。 ・五陵:長安の游侠の徒の多く住む所の名。李白の『少年行』「五陵年少金市東,銀鞍白馬度春風。落花踏盡遊何處,笑入胡姫酒肆中。」や、唐・白居易『琵琶行』「沈吟放撥插絃中,整頓衣裳起斂容。自言本是京城女,家在蝦蟆陵下住。十三學得琵琶成,名屬教坊第一部。曲罷曾教善才伏,妝成毎被秋娘妬。五陵少年爭纏頭,一曲紅不知數。鈿頭雲篦撃節碎,血色羅裙翻酒汚。今年歡笑復明年,秋月春風等闢x。弟走從軍阿姨死,暮去朝來顏色故。門前冷落鞍馬稀,老大嫁作商人婦。商人重利輕別離,前月浮梁買茶去。去來江口守空船,遶船明月江水寒。夜深忽夢少年事,夢啼妝涙紅闌干。」とある。 ・去:去る。行く。
※寶劍直千金:(これはわたしが)宝として大切に秘蔵する剣で、その値は千金になる(が)。 ・寶劍:宝として大切に秘蔵する剣。 ・直:ねうち。値段。値。 ・千金:大金。漢・魏の蔡文姫『胡笳十八拍』にも「東風應律兮暖氣多,知是漢家天子兮布陽和。羌胡蹈舞兮共謳歌,兩國交歡兮罷兵戈。 忽遇漢使兮稱近詔,遣千金兮贖妾身。喜得生還兮逢聖君,嗟別稚子兮會無因。十有二拍兮哀樂均,去住兩情兮難具陳。」とあり、李白の『襄陽歌』に「落日欲沒山西,倒著接花下迷。襄陽小兒齊拍手,街爭唱白銅。傍人借問笑何事,笑殺山公醉似泥。杓,鸚鵡杯。百年三萬六千日,一日須傾三百杯。遙看漢水鴨頭香C恰似葡萄初醗。此江若變作春酒,壘麹便築糟丘臺。千金駿馬換小妾,笑坐雕鞍歌落梅。車旁側挂一壺酒,鳳笙龍管行相催。咸陽市中歎黄犬,何如月下傾金罍。君不見晉朝羊公一片石,龜頭剥落生莓苔。涙亦不能爲之墮,心亦不能爲之哀。清風朗月不用一錢買,玉山自倒非人推。舒州杓,力士鐺。李白與爾同死生,襄王雲雨今安在,江水東流猿夜聲。」とあり、宋・賀鑄『六州歌頭』に「少年侠氣,交結五キ雄。肝膽洞,毛髮聳。立談中,生死同,一諾千金重。推翹勇,矜豪縱,輕蓋擁,聯飛,斗城東。轟飮酒,春色浮寒甕。吸海垂虹。闌ト鷹嗾犬,白駐E雕弓,狡穴俄空。樂怱怱。」 とあり、李白に『將進酒』「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復回。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡,莫使金尊空對月。天生我材必有用,千金散盡還復來。烹羊宰牛且爲樂,會須一飮三百杯。岑夫子,丹丘生。將進酒,杯莫停。與君歌一曲,請君爲我傾耳聽。鐘鼓饌玉不足貴,但願長醉不用醒。古來聖賢皆寂寞,惟有飮者留其名。陳王昔時宴平樂,斗酒十千恣歡謔。主人何爲言少錢,徑須沽取對君酌。五花馬,千金裘。呼兒將出換美酒,與爾同銷萬古愁。」 とあり、宋の蘇軾の『春夜』に「春宵一刻値千金,花有C香月有陰。歌管樓臺聲細細,鞦韆院落夜沈沈。」 と使う。
※分手脱相贈:別れに際して、これをはずして(あなたに)贈ろう。 ・分手:別れる。関係を絶つ。 ・脱:とる。はずす。 ・相贈:…に贈る。 ・相:…ていく。…てくる。動詞の前に附き、動作が対象に及ぶ表現。
※平生一片心:普段からの(わたしのあなたに対する)心(を表すために)。 ・平生:ふだん。平素。平常。 ・一片心:ひとつの心。唐・王昌齡には『芙蓉樓送辛漸』「寒雨連江夜入呉,平明送客楚山孤。洛陽親友如相問,一片冰心在玉壺。」 とあり、王之煥の「黄河遠上白雲間,一片孤城萬仞山。羌笛何須怨楊柳,春風不度玉門關。」があり、李白の『哭晁卿衡』「日本晁卿辭帝都,征帆一片遶蓬壺。明月不歸沈碧海,白雲愁色滿蒼梧。」や、李Uの『蝶戀花』「遙夜亭皋閑信歩。乍過C明,早覺傷春暮。數點雨聲風約住。 朦朦淡月雲來去。桃李依依春暗度。誰在秋千,笑裏低低語?一片芳心千萬緒,人間沒個安排處!」 とあり、陸游が『金錯刀行』「黄金錯刀白玉裝,夜穿窗扉出光芒。丈夫五十功未立,提刀獨立顧八荒。京華結交盡奇士,意氣相期共生死。千年史冊恥無名,一片丹心報天子。爾來從軍天漢濱,南山曉雪玉。嗚呼,楚雖三戸能亡秦,豈有堂堂中國空無人。」を作っている。文天祥の『過零丁洋』に「辛苦遭逢起一經,干戈寥落四周星。山河破碎風飄絮,身世浮沈雨打萍。惶恐灘頭説惶恐,零丁洋裏歎零丁。人生自古誰無死,留取丹心照汗。」があり、南宋・文天に『江月』和友驛中言別「乾坤能大,算蛟龍、元不是池中物。風雨牢愁無著處,那更寒蟲四壁。槊題詩,登樓作賦,萬事空中雪。江流如此,方來還有英傑。 堪笑一葉漂零,重來淮水,正涼風新發。鏡裏朱顏都變盡,只有丹心難滅。去去龍沙,江山回首,一綫青如髮。故人應念,杜鵑枝上殘月。」 と使い、我が国では、藤田東湖の『詠古雜詩』「我慕楠夫子,雄略古今無。誓建回天業,感激忘其躯。廟堂遂無算,乾坤忠義孤。空留一片氣,凛凛不可誣」と使う。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「紅空中」で、平水韻上平一東。次の平仄はこの作品のもの。
○●○○●●○(韻),
○○○◎●○○。(韻)
○○○●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2007.8.10 |
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