險夷原不滯胸中, 何異浮雲過太空。 夜靜海濤三萬里, 月明飛錫下天風。 |
海に泛 ぶ
險夷 原 より 胸中に滯 らず,
何 ぞ浮雲 の太空 を過 ぐるに異 らんや。
夜は靜 かなり海濤 三萬里,
月明 に錫 を飛ばして天風 に下 る。
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◎ 私感訳註:
※王陽明:(王守仁)明代の哲学者・思想家。陽明学の祖。成化八年(1472年)〜嘉靖七年(1528年)。紹興府余姚県(現・浙江省余姚市杭州東南東100キロメートル)の人。名は守仁。字は伯安。号して陽明。大監(宦官)の劉瑾を弾劾したために恨みを買い、貴州省の龍場に左遷された。その地で思索を続け、陸九淵の心学を継承・発展させ、「龍場の大悟」といわれる陽明学を生み、知行合一を提倡した。
※泛海:海に浮かぶ。貴州省の龍場に左遷される途上の作。
※険夷原不滞胸中:危地も平安も、心にもともと留(とど)まることなく。 ・険夷:険しいと平らと。世の治乱。=険易。艱難と平安。 ・原:もともと。もと。=元。 ・滞:とどこおる。停滞する。
※何異浮雲過太空:空中に浮かび漂う雲が大空を流れ去って行くさまに、どうして異なろうか。 ・何異:どうして異なろうか、の意。反語の表現。 ・浮雲:空中に浮かび漂う雲。 ・太空:おおぞら。天空。=大空。蛇足になるが、現代語では「宇宙(空間)」の意で使う。
※夜静海涛三万里:夜が静まっていき遥か彼方からの海の大波(の音が響き)。 ・夜静:夜が静まっていく意。 ・海涛:海の波。
※月明飛錫下天風:月明かりの下で、錫杖(しゃくじょう)を投げて空の高いところを吹く風に乗り、(投げた錫杖とともに目的地に飛んでいった僧侶のように、わたしも目的地を目指したい)。 ・月明:月明かりの下(で)。 ・錫:〔しゃく;xi2●〕僧侶や道士の用いる杖。 ・飛錫:僧が諸国を遍歴修行すること。唐僧・隠峰が錫杖を飛ばし、みずから空を飛んで五台山へ登ったという故事に因る。 ・天風:空の高いところを吹く風。
◎ 構成について
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