病牛 | |
〜南宋・李綱 |
耕犂千畝實千箱,
力盡筋疲誰復傷。
但得衆生皆得飽,
不辭羸病臥殘陽。
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病牛
耕犂 千 畝 實 千箱 ,
力 盡 き筋 疲 れたるも誰 か復 た傷 まん。
但 だ衆生 の 皆飽 を得 るを得 たらば,
羸病 殘陽 に臥 すを辭 さず。
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◎ 私感註釈
※李綱:(北宋末〜)南宋期の抗金政治家。(北宋)元豊八年1085年〜(南宋)紹興十年1140年。(南宋の)丞相に任命された。しかし、対金政策を巡って、職を辞めさせられていた。対金強硬派なので、除かれた。字は伯紀。号は梁溪居士。詩詞も強硬な「會當掃蕩豺狼穴,國恥乘時須一雪。酒酣拔劍斫地歌,心膽開張五情熱。中關之逐期我皇,江漢更灑累臣血。」や『梁溪詞』集に「古來夷狄難馴,射飛擇肉天驕子。唐家建國,北邊雄盛,無如頡利。萬馬崩騰,幇旗氈帳,遠臨清渭。向郊原馳突,憑陵倉卒,知戰守、難爲計。」と雄々しいのが残っている。
※病牛:病(やまい)の牛。祖国のために一身を犧牲とした作者自身の姿でもある。人々の幸福のために、我が身を犧牲にしても構わない。気付かれることがなくとも…。 *この詩は作者が武昌に流されていた時・(南宋)建炎二年(1128年)の作。
※耕犂千畝実千箱:(牛は)すきで(土を)すくこと、千畝(せ/ムー)(の面積で、)千箱の収穫物がある。 ・犂:〔り(れい);li2○〕〔名詞〕すき。 〔動詞〕(すきで土を)すく、耕す。ここは、前者の意。 ・畝:〔ほ(ぼう);mu3●〕せ。耕地の面積の単位。百歩を一畝とする。(一歩は六尺四方の広さ)。 ・実:産物。獲物。
※力尽筋疲誰復傷:(牛は)疲れて果てて力が尽きたが、誰も(心を痛めて)悲しんでくれようとはしない。 ・力尽筋疲:疲れてくたくたになる。力が尽き果てる。*現代(中国)語では成語となっている。 ・誰復-:反語。一体だれが…としようか。しない。 ・傷:いたむ。(心が痛んで)悲しむ。
※但得衆生皆得飽:ただ、人々が皆、充分に食べていけるようになるのならば。 ・但:ただ。だけ。ばかり。副詞。 ・衆生:〔しゅじゃう;zhong4sheng1●○〕(仏教用語)人類。 〔しゅうせい;zhong4sheng1●○〕生きとし生けるもの。生きている一切の人や動物。ここは、前者の意。 ・飽:〔はう;bao3●〕食物がじゅうぶんである。飽食する。十分食べる。また、満足する。十二分である。ここは、前者の意。
※不辞羸病臥殘陽:痩せ弱って病で、沈む夕陽の下で臥(ふ)せるようになることをも厭(いと)わない。 ・不辞:いとわない。…を辞さない。 ・羸:〔るゐ;lei2○〕痩せる。つかれる。弱り疲れる。 ・臥:ふせる。横になる。寝る。 ・殘陽:沈もうとする日。斜陽。夕日。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「箱傷陽」で、平水韻下平七陽。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●●○○,(韻)
●●○○○●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2019.7.28 7.29 |
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