![]() ![]() |
![]() |
自鄧州幕府暫歸秋林 | |
金~元・元好問 |
升斗微官不療飢,
中林春雨蕨芽肥。
歸來應被靑山笑,
可惜淄塵染素衣。
******
鄧州 の幕府より暫 く秋林に歸る
升斗 の微官 飢 を療 せず,
中林の春雨に蕨芽 肥ゆ。
歸來應 に 靑山に笑はるべし,
惜 しむべし淄塵 の 素衣を染むを。
****************
◎ 私感註釈
※元好問:金末の文学者。字は裕之。号して遺山。1190年~1257年。太原の人。北魏の拓跋氏の家系。作者の時代は、金・モンゴル・南宋が勢力を競い合っていた。なお、当時の金は、満洲、華北、華中をおさえていたが、モンゴルによって亡ぼされた1211年からモンゴル軍の金への侵入が始まり、1216年に元好問は母とともに洛陽の南南西100キロメートルの河南の三郷鎮(現・河南省)に疎開するが、河南も戦渦に巻き込まれた。
※自鄧州幕府暫歸秋林:鄧州(とうしゅう)の幕府から、しばらく、秋の林(恵みが多く集まっている所)へ帰る。 ・自-:…より。 ・鄧州:〔とうしう;Deng4zhou1●○〕地名。(河南省)南陽(郡)。現・河南省南陽市。 ・幕府:将軍の本営。 ・暫:しばらく。 ・歸:(元来居るべき所へ)かえる。もどる。 ・秋林:秋の(稔りのある)林。
※升斗微官不療飢:俸禄が僅かな身分の低い官吏は、飢えを癒(いや)せない(ので)。 ・升斗:俸禄が僅かなことを謂う。 ・微官:身分の低い官吏。 ・療飢:飢えを癒(いや)す。 ・療:いやす。 ・飢:うえ。
※中林春雨蕨芽肥:林の中は、(万物を育成する)春の雨で、ワラビの芽(=食用)が肥えていた。 ・中林:=林中。 ・蕨:〔けつ;jue2●〕ワラビ。 ・蕨芽:ワラビの芽。食用とする。 ・肥:大きくなる。大きくなった。
※帰来応被青山笑:帰ってきたら、きっと故里の青々とした山に笑われることだろう。 ・帰来:もどってくる。帰ってくる。 ・応被-:きっと…れることだろう。 ・応-:きっと…だろう。まさに…べし。 ・被-:…れる/…られる。 被…笑:笑われる。 ・青山:(故郷の)青々とした山。
※可惜淄塵染素衣:残念なことには、黒い塵(ちり)(=俗塵)が白い衣(ころも)を染めてしまった(ことだ)。 ・可惜-:残念なことには…。残念である。惜(お)しむべし。 ・淄塵:〔しぢん;zi1chen2○○〕黒い塵(ちり)。俗塵。 ・淄:くろむ。黒く染める。また、くろ。 ・素衣:白い衣(ころも)。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「飢肥衣」で、平水韻上平四支(飢)・五微(肥衣)。この作品の平仄は、次の通り。
○●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
○○◎●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2021.8.24 |
![]() ![]() ![]() ************ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
![]() |