從軍行 | |
|
唐・楊炯 |
烽火照西京,
心中自不平。
牙璋辭鳳闕,
鐵騎繞龍城。
雪暗凋旗畫,
風多雜鼓聲。
寧爲百夫長,
勝作一書生。
******
從軍行
烽火 西京 を照らし,
心中自 づから平 らかならず。
牙璋 鳳闕 を辭 し,
鐵騎 龍城 を繞 る。
雪 暗くして旗畫 凋 み,
風 多くして鼓聲 を雜 ふ。
寧 ろ百夫 の長 と爲 らんも,
一書生と作 るに勝 れり。
****************
◎ 私感註釈
※楊炯:初唐の詩人。650年〜693年頃。弘農華陰(現・陝西省華陰)の人。神童に挙げられた。剛直で、当時の宮廷官僚の虚飾を深く憎んでいた。そのため官途も後、婺州の盈川の令に左遷され、楊盈川とも称された。初唐四傑の一。
※従軍行:辺疆塞外を詠う。 *樂府の相和歌辞。
※烽火照西京:(国境地帯から外夷侵攻を知らせる警報の)のろし火が、長安の都を照らし。 ・烽火:のろし(火)。 ・西京:長安の都のこと。
※心中自不平:心は、自(おの)ずと昂(たか)ぶってきた。 ・自:自然と。おのづから。 ・不平:静かではない。たいらかでない。
※牙璋辞鳳闕:牙璋(=軍隊を出陣させる時に用いる割り符)を(天子より賜って)宮城の門をに別れた。 ・牙璋:〔がしゃう;ya2zhang1○○〕軍隊を出陣させる時に用いる割り符。 ・鳳闕:〔ほうけつ;feng4que4●●〕漢代の宮城の門の名。門の上に銅製の鳳凰が飾り付けてあったのでいう。転じて、宮門。
※鉄騎繞龍城:(我が軍の)鉄の鎧・兜を付けた精鋭な騎兵が匈奴(=ここでは西方異民族の意)の本拠地を取り囲んだ。 ・鉄騎:精鋭な騎兵。鉄の鎧・兜を付けた騎兵。 ・繞:めぐらす。めぐる。 ・龍城:漢代、匈奴が集会して天を祭った所。転じて、匈奴の地。=龍塞。また、地名。ここは、前者の意。
※雪暗凋旗画:雪は、降りしきって、辺りは暗くなったため、旗の面に画かれた絵模様は凋(しぼ)んで。 ・凋:しぼむ。 ・旗画:旗の面に画かれた絵模様。
※風多雑鼓声:風は強く、軍鼓の音が混じっている。 ・鼓声:(軍中で用いる)つづみを打つ音。≒軍鼓。
※寧為百夫長:(わたしは)(学者となるよりも、)むしろ(戦場の)小隊長となるほうが(ましである)。 ・寧為-:〔ねいゐ;ning4wei2●○〕むしろ…のほうがましである。むしろ…となるとも。 ・百夫長:百人の兵卒の指揮官。現代の軍制で謂うと、少尉などの下級将校の指揮官による(数十人から)百人(未満)の部下を指揮する小隊長。
※勝作一書生:一介の学者となるよりも、(むしろ戦場の小隊長となるほうが)ましである。 ・勝:まさる。 ・作-:…となる。 ・書生:学問する人。読書階級の人。世間のことを知らぬ学者。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AAAAA」。韻脚は「京平城聲生」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
○●●○○,(韻)
○○●●○。(韻)
○○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○●○●,
◎●●○○。(韻)
2015.6.4 6.5 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 陶淵明集 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |