長信秋詞
唐・王昌齡
眞成薄命久尋思,
夢見君王覺後疑。
火照西宮知夜飮,
分明複道奉恩時。
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長信
(
ちゃうしん
)
秋
(
しう
)
詞
(
し
)
眞成
(
しんせい
)
に 薄命なるかと 久しく
尋思
(
じん し
)
し,
夢に
君王
(
くんなう
)
に
見
(
まみ
)
えて
覺
(
さ
)
めし
後
(
のち
)
疑ふ。
火は
西宮
(
せいきゅう
)
を照らして
夜飮
(
や いん
)
を知る,
分明
(
ぶんめい
)
なり
複道
(
ふくだう
)
に 恩を奉ぜし時。
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◎ 私感註釈
※王昌齡:盛唐期の詩人。700年?(嗣聖年間)〜755年?(天寶年間)。字は少伯。京兆の人。七言絶句に秀で、辺塞詩で有名。
※長信秋詞:天子の寵愛を失った女性の嘆きの詩。全五首のうちの第四首。第一首は「金井梧桐秋葉黄,珠簾不捲夜來霜。熏籠玉枕無顏色,臥聽南宮清漏長。」
、第三首は「奉帚平明金殿開,且將團扇共徘徊。玉顏不及寒鴉色,猶帶昭陽日影來。」
。詩題を『長信怨』ともする。漢・班婕、の『怨詩』「新裂齊紈素,皎潔如霜雪。裁爲合歡扇,團團似明月。出入君懷袖,動搖微風發。常恐秋節至,涼風奪炎熱。棄捐篋笥中,恩情中道絶。」
に基づく。 ・長信:「長信宮」のことで、漢代に、きさきが住んだところ。ここでは、後宮の意で使われている。
※真成薄命久尋思:本当に薄幸であると、長い時間思案してきて。 ・真成:“真的(本当に/の)”、“真箇(本当に。実に。確かに。まことに)”(『古漢語字典』815ページ 張永言等合編 巴蜀書社出版 1998年成都)。 ・薄命:薄幸である。 ・久:(時間が)長い。ひさしい。 ・尋思:考える。思案する。
※夢見君王覚後疑:夢で、天子様にお目見えして(夢より)覚めた後、(お目見えしたことは、夢だったのか…と)疑ってしまう。 ・君王:君主。天子。 ・覚:目覚める。
※火照西宮知夜飲:西宮(=妃(きさき)の住んでいる宮殿)が火で照らし出され、夜の酒宴が行われているのが分かる。 ・西宮:天子の妃(きさき)達の住んでいる宮殿。 ・知:わかる。悟る。 ・夜飲:夜の酒宴。夜に酒を飲む。夜に酒盛りをする。
※分明複道奉恩時:(わたし(=女性)は)複道で、天子様の恩をつつしんで受けた時のことを明らかに(思い出す)。 ・分明:〔ふんみゃう/ぶんめい;fen1ming2○○〕明らか。はっきりしている。 ・複道:上下二段に造った廊下で、二階側が天子の通る廊下。 ・奉恩:恩をつつしんで受ける。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。
韻脚は「思疑時」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
○○●●●○○。(韻)
2018.11.7
11.8
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