詩詞世界　碇豊長の漢詩　燦爛陽光之歌　文化大革命期の詩歌争取勝利

　　　　　　　　　　爭取勝利

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

下定決心，
不怕犠牲，
排除萬難，
去爭取勝利。
下定決心，
不怕犠牲，
排除萬難，
去爭取勝利。
下定決心，
不怕犠牲，
排除萬難，
去爭取勝利。

　
******

　　　　　　　　　　　　　　　　　　爭取勝利

決意をかため，
犠牲を恐れず，
万難を排して，
勝利を闘い取ろう。
決意をかため，
犠牲を恐れず，
万難を排して，
勝利を闘い取ろう。
「決意をかため，
犠牲を恐れず，」
万難を排して，
勝利を闘い取ろう。

　　　　　　**********

◎　私感註釈：

※これは毛澤東の言葉を歌にしたもの。“毛主席語録歌”という。出典は『毛澤東選集』第三巻『愚公移山』だが、広く知られたのは、『老三篇』の一つとして、また『毛主席語録』の一節としてである。出典の『毛澤東選集』の中の『愚公移山』は一九四五年六月、毛澤東が在中国共産党第七次全国代表大會会での閉幕の言葉として言われたもので、まず、この歌の内容である決意について述べ、それに続いて『列子　湯問』の内容を現代語で説明して、我々（共産党員は、愚公となって）中国人民の頭上の二つの大きな山である“帝国主義”と“封建主義”を取り除き、上帝である人民を感動させねばならないと論じた。原文は「…我們宣傳大會的路線，就是要使全黨和全國人民建立起一個信心，即革命一定要勝利。首先要使先鋒隊覺悟，下定決心，不怕犧牲，排除萬難，去爭取勝利。…………中國古代有個寓言，叫做“愚公移山”。説的是古代有一位老人，住在華北，名叫北山愚公。…」とある。
　　この歌は「下定決心，不怕犠牲，排除萬難，去爭取勝利。」の部分を三回繰り返したものだが、三度目の「下定決心，不怕犠牲」の部分（赤字の部分）は、唱わないで、シュプレッヒコールのように言う。
※下定：（決心を）固める。
※決心：決心。決意。
※怕：恐れる。こわがる。
※犠牲：犠牲となる。犠牲となって死ぬ。ここでは後者の意。
※排除萬難：万難を排して。あらゆる困難を克服して。「難」は形容詞（むづかしい）の場合は○で、名詞（難儀、災禍、災難）の場合は●（去声）になる。“万難”の“難”はその意味から言っても名詞になる。実際、大修館の『中日大辞典』では“万難”については両方の発音が載っており、ここの意味では語義から考えて当然のことだが、名詞（難儀、災禍、災難）去声になっている。
　　ここで問題となるのが、私の記憶では、文革の頃は、“万難”については、形容詞（むづかしい）としての平声（陽平）になっていたことである。当時も「何かおかしいなあ」という気持ちもあって、鮮明に覚えている。（或いは軽声になっていたかもしれないが）。その記憶を裏付ける、と言うほどのことも無かろうが、小学館の『中日辞典』でも“万難”については、形容詞としての平声（陽平）になっている。
　　ここは、その語義から考えて大修館の『中日大辞典』の発音である名詞（難儀、災禍、災難）去声が本来の形になるのだろう。
※去：すすんで…しに行く。自ら積極的に行動を取るときに使う。ここは“去爭取勝利”でなくとも“爭取勝利”でも似たような意味だが、「頑張って勝利を勝ち取ろう。」の意味が前者では出てくる。
※爭取：獲得する。勝ち取る。がんばって…する。
※勝利：勝利。

◎　構成について：

　　本来、演説の言葉なので平仄、押韻を論じるのは、おかしなものだが、一応記す。なお、「難」は形容詞（むづかしい）の場合は○で、名詞（難儀、災禍、災難）の場合は●になる。

●●●○，
●●○○，
○○●○，
●○●●●。

●●●○，
●●○○，
○○●○，
●○●●●。

●●●○，
●●○○，
○○●○，
●○●●●。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

２００２．９．２８
　　　　　９．２９完