Shici Shijie shicishijie
醉裏挑燈看劍, 夢回吹角連營。 八百里分麾下灸, 五十絃翻塞外聲。 沙場秋點兵。 馬作的廬飛快, 弓如霹靂弦驚。 了却君王天下事, 贏得生前身後名。 可憐白髮生。 |
醉裏 燈を挑(かきた)てて 劍を看れば,
夢は 回(めぐ)る 角 吹ける連營を。
八百里(うし)は 麾下に分かちて 灸(あぶ)り,
五十絃は 翻(かな)づ 塞外の聲を。
沙場 秋に 兵を點ず。
馬は 的廬(ろてき)の作(ごと)くに 飛快し,
弓は 霹靂(へきれき)の如く 弦 驚かす。
君王の 天下の事を 了却し,
生前 身後の名を 贏(か)ち得(え)たるも,
憐む可(べ)し 白髮の生ずるを。
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私感注釈
※破陣子:詞牌の一。詞の形式名。詳しくは下記の「構成について」を参照。
※爲陳同甫賦壯詞以寄之:陳亮のために雄々しい詞を作り、送る。 ・陳同甫:陳亮のこと。同甫は字。辛棄疾と交遊があった陳亮は、豪胆で秀逸。陳亮の詞は「碧血の詩編」に数編ある。
※醉裏挑燈看劍:酔いのうちに、ともしびの火をかきたてて、剣を見れば。 ・醉裏:酔いのうちに。酔っているときに。 ・挑燈:ともしびの火をかきたてる。盛唐・崔國輔の『子夜冬歌』に「寂寥抱冬心,裁羅又褧褧。夜久頻挑燈,霜寒剪刀冷。」とあり、南宋・陸游『病起書懷』に「病骨支離紗帽寬,孤臣萬里客江干。位卑未敢忘憂國,事定猶須待闔棺。天地神靈扶廟社,京華父老望和鑾。出師一表通今古,夜半挑燈更細看。」とある。 ・看劍:剣を見る。
※夢回吹角連營:(軍営のラッパである)つのぶえ(の鳴り響いている)連なり続いているとりで(の頃)に、夢はめぐっていく。 ・夢回:夢は、めぐる。夢想で、(連営を)かけめぐる。夷狄との戦闘を回想する。また、「夢回」は、「夢から醒める」と読めるが、意味が違ってくる。ここは、詞全体の構成から見て、前者。後者の例に、南唐後主・李煜の『喜遷鶯』に「曉月墜,宿雲微,無語枕頻欹。夢回芳草思依依,天遠雁聲稀。 啼鶯散,餘花亂,寂寞畫堂深院。片紅休掃儘從伊,留待舞人歸。」とあり、南宋・陸游の『小雨極涼舟中熟睡至夕』に「舟中一雨掃飛蠅,半脱綸巾臥翠籐。淸夢初回窗日晩,數聲柔艪下巴陵。」
とある。 吹角連營:(軍営のラッパである)つの笛が連営で吹かれて。 ・角:角笛(軍営のラッパ)。 ・連營:とりでをつらねる。連なり続いているとりで。唐・儲光羲(戴叔倫)の『關山月』に「一雁過連營,繁霜覆古城。胡笳在何處,半夜起邊聲。」
とある。
※八百里分麾下灸:(その当時、)牛肉を家来に分けて炙って食べた。 ・八百里:牛。ここでは牛肉のこと。『晉書巻四十二・列伝第十二王渾傳子濟』に「愷以帝舅奢豪,有牛名『八百里駁』,常瑩其蹄角。濟請以錢千萬與牛對射而賭之。愷亦自恃其能,令濟先射。一發破的,因據胡牀,叱左右速探牛心來,須臾而至,一割便去。」とあり、弓の賭をして美食家の王済が勝ち、「八百里駁」の歓心を手に入れた、とある。 ・分麾下:麾下で分かつ。部下で分ける。 ・麾下:部下。 ・灸:あぶる。焼く。
※五十絃翻塞外聲:五十弦の瑟は辺疆の音楽の音色を演奏した。 ・五十絃:瑟のこと。大琴。古代は五十絃あった。十五絃、十九絃、二十五絃、二十七絃、そして五十絃などがある。『史記・封禪書』「或曰:『太帝使素女鼓五十弦瑟,悲,帝禁不止,故破其瑟爲二十五弦。』」(古代の瑟は五十弦であったが、音色が悲しすぎるので、後に二十五弦と改められた)とある。(『漢書・郊祀志第五上』に「泰帝使素女鼓五十絃,悲,帝禁不止,故破其瑟爲二十五絃。」(古代の瑟は五十弦であったが、音色が悲しすぎるので、後に二十五弦と改められた)とある。)晩唐・李商隱の『琴瑟』に「錦瑟無端五十弦,一弦一柱思華年。莊生曉夢迷蝴蝶,望帝春心托杜鵑。滄海月明珠有涙,藍田日暖玉生煙。此情可待成追憶,只是當時已惘然。」とあり、中唐・錢起の『歸雁』に「瀟湘何事等閒回,水碧沙明兩岸苔。二十五弦彈夜月,不勝淸怨卻飛來。」
とある。 ・翻:演奏する。 ・塞外:国境付近の遠い土地。辺疆。
※沙場秋點兵:戦場で、秋に閲兵がなされた。 ・沙場:(古・現代語)戦場。戦場は、塵土飛揚し、飛沙走石となるため、戦場の比喩。砂原(すなわら)や砂漠ではない。胡人の住んでいる前線でもある。 ・秋:秋は、中国本土から見れば、匈奴の侵攻がある緊張の高まる季節である。杜審言の「雲靜妖星落,秋高塞馬肥」や秋瑾の「秋高馬正肥」 等に見られる、秋は、匈奴の軍馬も肥え太り、中原進出の絶好の機会となったという意味で使われている。豪放詞では、「秋」は秋の風情を詠うことは、あまりないのではないか。「秋」は前記の意味が無くとも、陰鬱な空気が漂う。 ・點兵:閲兵をする。匈奴の攻撃に備えて、軍事訓練をすること。
※馬作的廬飛快:馬は、的廬(てきろ)のようにとても速く。 ・作:如し。…のようにふるまう。…とする。…となす。 ・的廬:〔てきろ;di2(?)lu2●○〕名馬の名。額に白い模様を有する馬。劉備の乗馬の名。劉備が窮地に陥った際、この馬に乗って逃げた。また、凶馬。ここでは前者の意。 ・飛快:極めて速いこと。
※弓如霹靂弦驚:弓は、霹靂の如く弦の音に驚かされる。 ・如:…のようだ。ごとし。前の句の「作」の対となる語。 ・霹靂:急に激しく鳴り響く雷の音。 ・弦驚:矢を射る、つるの音に驚く。
※了却君王天下事:君主の天下統治の事業を成し遂げて。 ・了却:(古白話)成し遂げる。果たす。
※贏得生前身後名:不朽の名声を勝ち得た(ものの)。 ・贏得:勝ち得る。 ・生前身後名:不朽の名声。
※可憐白髮生:ああ、白髪が生えてきている(ではないか)。 ・可憐:(古語)(現代語)憐れむべし。かわいそうである。白居易の長恨歌には「可憐光彩生門戸」とあり、その意味は、心の大きな動きを表すものとして「すごい」等と訳せばよいか。 ・白髮生:(前項までの事績を成し遂げたいが、残念ながらもう既に)白髪が出てきた。
◎ 構成について
破陣子
双調。
六十二字。平声韻一韻到底。韻式は「AAA AAA」。韻脚は「營聲兵 驚名生」で、第十一部平声。
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●○○。(A平韻)
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○○●●,
●○○
●○。(A平韻)
○
●○。(A平韻)
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○
●,
○
●○○。(A平韻)
●
○○●●,
●○○
●○。(A平韻)
○
●○。(A平韻)
2001.5.29 5.30完 8.27補 2003.9. 9 2011.5.31 2014.3.24 3.25 |
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