私がこれを模型店で初めて見つけたのは昭和50年頃だったと思います。最初は見送ってしまい、後日買いに行ってみると売り切れでした。
というわけで、今回初めて組み立てました。ナガノのD51に比べ、より確実に走るものか、ずっと興味を持っていました。
店頭でのパッケージは大変目立ちました。機関車の背景が赤を基調とした謎空間になっているのが珍しいです。
パッケージ側面には、同時に発売されていた貨車をけん引するイメージが描かれています。
私の組み立て例では、ここまでの数は牽引できそうもありませんが、
…よく見ると、連結されていないのでありました。
引いちゃいなかったんですね(笑)。2つの絵をつなぎ合わせていたようです。
箱の中身です。このほかにレールが一式と説明書があります。
ボイラー部は左右分割ではなく一体です。テンダーもキャブもそれぞれ一体成型で、主要なディテールがモールドされています。金型にお金をかけていますね。
これは中古品なので、新品時とは違っているかもしれません。ただ開封された形跡はありません。主要な機構部品さえ揃っていればいいです。
レールは黒っぽいこげ茶色という感じです。他社製品に共通なものがありそうな、なさそうな。
今のマイクロエース(旧アリイ)のプラ模型のレールに連結部が似ていますが、枕木の間隔が広く、同じではありません。
軌間もナガノと同様の16.0mmで、HO標準軌の16.5mmにはちょっぴり足りません。ただ車輪をそのまま組み立てた感じでは16.0mmにはきつく、16.5mmのほうがスムーズに走れるようです。
車輪から組み立てます。従輪やテンダー車輪は、金属シャフトの両側にピボット車輪を打ち込む方法です。
打ち込みが間違いなくできるよう、両端のピボット軸が潰れないようにするAパーツと、バックゲージを確保するBパーツが付属しています。
全部をうまく組み合わせてハンマーで打ち込むのは少々難しいですけども、車輪はしっかり組み上がります。
先台車・従台車を組み立てたところ。
ちょっと不思議だったのは※印の板です。テンダーのドローバーを留める穴があります。この板は水平ではなく、後方が少し斜めに持ち上がっているのですが、裏側のリブにニッパーなどで切り込みを入れ、手作業で折り曲げた形跡がありました。
前オーナーが何かの理由で手を加えたのかと思いましたが、部品はランナーに付いたまま熱着包装されており、開封の形跡はありませんでした。何かの不具合調整のために工場で後加工したのかもしれません。これについては謎です。
次は主台枠にギヤボックスとモーターを取り付けます。
丸型のRE-140(当時RE-14)モーターを用い、ギヤボックスに伝達して第3・第4動輪の2軸を駆動します。
モーターはナガノやバンダイのC62と違い、斜め置きではなく水平置きです。ゴムジョイントも使っていないので見た目には安定した構造です。
ただちょっと問題がありました。そのままモーター台を取り付けると、平ギヤーのかみ合わせが非常に固くなってしまいました(写真は是正済み)。
私が適正だと思う噛み合わせにするためには、モーター台を約1mmかさ上げする必要がありました。結果モーターも持ち上がり、ボイラーの取り付け高さにまで影響してしまいます。
しかし私は調子よく走らせたかったので、噛み合わせの具合を優先しました。
モーターを取り付けたところです。スムーズに回転しますが、このままではモーターの上端がボイラー内側につっかえます。ボイラーを削る程度でうまくいくかどうか。
ボイラーはここまで一体成型されています。下廻りのラジアスロッドやモーションプレート、空気溜めまで成型済みです。
全体に形状は良好だと思いますが、ドーム前のステップ部の帯板が妙にブ厚いのは気になるところです。修正しようとすれば大変です。
ボイラー内側のモーターが当たる部分をギリギリまで削り込み、無理に上下を合わせました。それでもモーターが強く押し付けられ、ギヤの噛み合わせがダメになって回転しなくなりました。
どうしても、モーターが上がったぶんを吸収しきれていません。
ちなみにこのキットの第1・第2動輪は、ギヤでもロッドでも連動せず、完全に遊んでいます。
泣く泣くモーターをFA-130に変更しました。それに合わせて金属のモーター台を加工し、新たに留め具を作りました。
FA-130とRE-140は回転数などが違うのですけども、そこはガマン。なぜかきちんとギアが噛み合わなかったのが大元の原因なので仕方ありません。
上下がうまく合うようになったので、ロッド関係に進みます。
クロスヘッドと主連棒をネジ留めしました。このクロスヘッドの裏側は真っ平らであり、スライドバーに引っかからないので、何か作り足す必要があります。
前から見たクロスヘッド部の断面のつもりです。クロスヘッドの裏側に薄い真鍮板を折り曲げて接着しました。
スムーズに動くようになりました。
プラスチックのスライドバーが真鍮板で摩耗しそうですけども、それほど長く使うものでもないので手早く終えました。
リターンクランクから加減リンクまでです。
クランクピンはネジ式です。これが金属キットなら、まず動輪にクランクピンを固定し、そこにリターンクランクをハンダ付けします(あとで角度を調整するときはハンダ付けし直す)。
これはプラキットなのでハンダ付けではなく接着固定しました。リターンクランクの角度は動輪へのねじ込みの深さで調整しました。
組み立てた下廻りは一発でスムーズに動いてホッとしました。ロッドが引っかかることもありません。スケールモデル的なキットでは、これまで組み立てた中で一番動作具合がよいような気がします。
ちなみに説明書での動輪位相の指示がちょっと変わっていまして、左120度先行? のように不思議な感じです。このほうが組み立てやすいと書かれています。
私は右90度先行にしてしまいましたけども。
リターンクランクの角度も珍しい気がしますが、こういうキットに興味を持って組み立てる方は、自然と正しい位置に近づけて組み立てられるかもしれません。
私も意図的に角度を変えていまして、実物ほど前傾させていません。エキセントリックロッドや加減リンクの動きをなるべく小さくし、激しい動きによるプラ製パーツの負担を軽くしようという狙いです。
残りは外装部の組み立てが少しです。
除煙板とシリンダーブロックは一体成型されています。
右側はオイルポンプ箱まで一体成型されています。小部品は結構取り付けが面倒なことがあるので、こういうのは嫌いではありません。
除煙板とシリンダーブロックはぴったりはまりました。この部品を完全に接着すると、以後ボイラー部と下廻りは分離できなくなります。
手前に控えているのはキャブです。これも大部分が一体成型されています。
キャブはまっすぐ付くよう、微妙に接合部を調整しました。後付けのパーツは天窓と床板だけです。
下廻りには左右の繰り出し管と、コンプレッサー、給水ポンプを付けます。
給水ポンプの裏側は第4動輪クランクピンに当たるので、厚みを半分ほどに削りました。このへんは蒸機キットでは無意識にやったりするところです。
ボイラー部のハンドレール、給水ポンプ蒸気管などは別パーツを接着するため、ほどほどの精密感が出ます。
またプラキットとしては珍しく、安全弁が真鍮挽物です。付けるだけで模型っぽくなってちょっと嬉しいです。
D51標準形であるにもかかわらず、煙室枠の外周に少し丸みが付いているのが大変残念なところです。1次形(なめくじ)ほどは丸くありませんが、3D CADでいえばフィレット1mmぐらいは付いているでしょうか。
このRを埋めて角を付けるのは難しいのでこのままです。
ライトのレンズの代わりに、ダイヤカットされた透明パーツが付属していますので、それを付けました。当時、同じエーダイ(グリップ)の9mmゲージのゼンマイ式D51もこんな表現でした。
あとは端梁周囲を組み立ててエンジン部は完成です。デッキ左右のハシゴには のりしろ がほとんどなかったので、三角形に切ったプラ板を裏側に貼って補強しました。
残りはテンダーです。
テンダー台車のフレームは一体成型されており、左右の台車枠の接着とともに車輪をはめ込めば、安定してまとまります。
テンダー内部には単3電池を2本積みます。この2本は並列つなぎなので、1本でも動きます(そのほうが軽くて調子よく走りました)。
後部のスイッチはON/OFFのみで逆転機構はありません。
機関部とテンダーはドローバーの両端を木ネジで留めて連結します。間を配線が通っているので、簡単に分離しない構造なのは安心です。
最後に…付属のナンバープレートのシールですけども、全体に小さくていまいち感じも出ておらず、無理に貼らないほうがよいような気もします。
一度は貼ってみます。
最初の噛み合わせの調整に伴うモーターの交換というハプニングはありましたが、あとは部品の作り足しや調整の箇所も少なく、とても楽にできたという印象です。
噛み合わせの件は私の組み立てが悪かったのか、ちょっと不明な部分はあるのですけども。
カツミ D51
こちらは16番の鉄道模型、カツミ「SLシリーズ」の塗装済キットです。永大のプラ模型と同時期に売られていたものなので並べてみました。
(金属キットとはいえドライバー1本で組み立てられるので、実はプラキットより簡単)
ナガノのD51も混ぜて横から見てみます。
ナガノ D51
縮尺1/75のプラ模型です。これも電池モーターで走ります。
第2・第3動輪はフランジレスです。
永大 D51
今回組み立てたものです。
カツミ D51
ドローバー穴は「短」にセットしています。
ナガノとの前面比較です。それぞれ、部分部分で似ている箇所が異なりますね。どちらもこのクラスのプラ模型としてはいいセン行っていると思いますが。
永大 |
ナガノ |
KATOの16.5mmゲージの線路を走らせたところです。
空中回転、走行
私の作例では16.0mmゲージの付属レールを使うと、曲線で抵抗が大きく脱線しがちでした。KATOの16.5mm(R550)ならまだ脱線しにくいので楽しく遊べます。というか先輪がたまに脱線する程度ならほっといてます(笑)。調子よく走らせるなら、先台車が干渉しにくいよう、シリンダー前側をざっくり加工したほうがよさそうです。
今のところ、ギヤが変な噛み込みを起こしたり、ロッドが絡んで止まったりするトラブルは一度もありません。私の作例にしては奇跡的です。
全体に組み立て体験は良かったのですけども、当時でも初めての方が組み立てればハマりまくりだったと思います。ただロッド類を付けなければ走ったという方はそれなりに多かったかもしれません。
私の買ったキット以外に改良された別ロットがあったのかは存じませんが、あと1、2回は試作・修正を繰り返すことができていたならば、走るD51のプラ模型として決定版になり得たかもと残念な気持ちではあります。永大もその後倒産してしまいました。
さて、まだモーターで動く蒸気機関車のプラ模型も手元にあるにはあるのですが、私には組み立てられそうもないものだったりしまして、手をつけられるかわかりません。機会があればまたいつか。