Nゲージ蒸気機関車>蒸機の工作>樺太鉄道60形(鉄道省7720形)の組み立て
動力ユニットの組み立てから完成までです。ちょっと長いです。
左側の台枠(H1-1)にギヤを取り付けていきます。
まずプラスチック製の小ギヤに、真鍮の小ギヤ軸を通し、台枠の表からM1.4×2.5mmネジで固定しました。
固定前に、小ギヤ軸の表面にできているバリは削り取っておきました。
小ギヤ軸の長さは、小ギヤの厚さよりも若干長いので、ネジをしっかり締めてもギヤは軽く回ります。緩んでしまうとやっかいなので、しっかり留めておきました。
フレームの内側は塗装していませんが、この機関車はボイラーがランボードからかなり浮いており、斜め上からフレームの内側が見えることがあとでわかりました。しっかり塗っておいたほうが良さそうです。
同様に、大ギヤに大ギヤ軸を通し、表からM1.4×3mmネジで固定しました。
大ギヤ軸のバリもあらかじめ削っておきました。
大ギヤを指で回し、3つのギヤが軽く回ることを確かめました。ギヤ連動するのは第二・第三動輪で、第一動輪はサイドロッドによる連動です。
一緒に塗装したため、モーターブラケットやシリンダーブロック、モーションプレート台座がくっついた状態ですが、組み立ての邪魔になるのでこのあと外しています。
左右の台枠を電気的に絶縁させて結合するため、間に真鍮のスペーサー(メカステー)と、絶縁ワッシャーを挟みます。
部品構成は次のとおりです。
1. ワッシャー(H1-6)
2. メカステー ※大ギヤ軸に似ています。端にできているバリは削り取っておきました。
3. 絶縁ワッシャー(メカステーにゴム系接着剤で接着しました)
4. 外側からM1.4×2ネジで固定。
前方のメカステーも同様です。
右側の台枠(H1-2)をネジ留めしました。
1. 絶縁ブッシュをH1-2の前後の穴にそれぞれはめ込み。
2. M1.4×2mmナベネジで固定。このネジは他の箇所のネジ(コナベ)と違い、ネジの頭が大きいナベネジです。
絶縁ワッシャーと絶縁ブッシュにより、ネジがH1-2に直接触れないので、左右がネジによってショートすることはありません。
左右の台枠が水平・平行になっていないと、前後の軸受けにねじれが生じ、車体がガタついて集電も悪くなります。あとで動輪をはめてから前後のネジを少し緩め、レールの上で軽く上から押さえながら締め直しました。
今回は軸受けをマスキングせずに塗装したので、車輪押さえを取り付けてから、ヤスリで塗装をはがすことにしました。
まず左右の車輪押さえ(H1-3・H1-4)を、M1.4×1.5mmネジで固定しました。後で動輪を取り付けるときには、一度外します。
軸受けに2.5mm丸ヤスリを通し、静かに回転させて塗装をはがしました。
ゴリゴリ前後に動かしたりして、軸受けを傷めないように注意です。
説明書には、Φ2.5のリーマーか油目丸ヤスリとありますが、どちらを使ってもよいと思います。私がやった限りでは、リーマーとヤスリで走行性に差が出たことはありません。
写真のヤスリは「魚地球」のライン丸2.5Φです。軸受け専用に使っています(他は模型店やホームセンターで適当に買った組みヤスリを使っています)。
モーターを、モーターブラケット(A4-1)にM1.4×1.5mmネジで固定しました。
A4-1に開いている取り付け穴の間隔が、モーターのネジ穴の間隔よりも少し狭かったので、ヤスリで少し外側に広げました。
モーターの向きについては説明書に記載があります(後述)。
1. モーターブラケットを、台枠の下からM1.4×1.5mmネジで固定しました。
2. ウォームをシャフトに差し込み、前後の位置に注意して、エポキシ系接着剤で接着しました。
ウォームと大ギヤの噛み合わせの深さに注意し、歯の高さの半分程度になっているか確認しました。特に調整することなく、ちょうどよい位置になっていました。
モーターに配線しました。電気配線なので金属用フラックスは使わず、電気配線用(模型工作用)のヤニ入りハンダを使いました。
1. この突起が右下になる向きにモーターを固定しました(極性があるため)。
2. モーターブラケットの後ろの突起の塗装をはがし、モーターの端子にハンダ付け。
3. もう一方の端子と、右側の台枠(H1-2)後部の小ラグを、リード線で結んでハンダ付け。
付属の配線は硬くて使いにくかったので、別なリード線を使いました。
台枠後部のラグは小さいうえ、すぐそばに熱に弱い絶縁ワッシャがあるため、一度右側の台枠(H1-2)を外し、リード線をハンダ付けしてから取り付け直しました。
動輪を組み立てます。
左右の車輪をプラスチック製のギヤ軸に圧入し、内側に輪心リングをはめ込みます。
まずはギヤ軸を圧入しました。
ギヤ軸はとても大事な部品ですが、プラスチック製で柔らかいので、誤って曲げないよう注意が要ります。予備が1本含まれています。
ギヤ軸の両端に動輪を差し込んで、なるべく平行に圧入するため、万力に挟みました。
少しずつネジを回して圧入していき、中央のギヤに達したら完了です。圧入自体はとても簡単です。
動輪の内側に、真鍮製の輪心リングをはめ込んでおきました。この動輪は付属の輪心パーツ(他形式と共通)よりも少し直径が大きいので、隙間を埋めるためです。
輪心リングは表に見える断面を中心に、内外も軽く塗装しておきました。特に外周を削り合わせる必要はなく、外周が薄く塗装されたまま、指だけで無理なくはめ込むことができました。ただ、斜めに入らないよう注意が要ります。
軸受けをヤスリで整える際に取り付けた車輪押さえ(H1-3・H1-4)を一度外し、組み立てた動輪3個を軸受けに入れて、再度取り付けました。
ここでレールに載せ、左右の台枠を留めている前後のメカステーを緩めて、車体がガタつかないよう上から軽く押さえ、締め直しています。
プラスチック製の輪心は、あらかじめ外周の内側をヤスリで少し面取りし、中央の軸穴もΦ2.5mmのヤスリでさらっておきました。
車体左側の動輪に輪心をはめ込みました。
ウォームが付いているため第二・第三車輪は回転しませんが、ギヤの歯のアソビにより少し動くので、そのアソビが左右均等になるように輪心の向きを調整しました。
そのまま裏返し、左側に対し90度先行するようにして輪心を取り付けました。
第一動輪はギヤ連動していないため、くるくる回ってしまいますから、正確に90度先行させて取り付けるのは少々難しいです。透明プラ板に直線を引いて反対側の輪心に貼り付けたり、鏡で反対側の様子を見たりしながら調整しました。
第一動輪はロッド連動になるため位相合わせには特に注意が要ります。しかし、ワールド工芸の機関車の中では、このように第二・第三動輪のみギヤ連動し、第一動輪はロッドのみで連動する構造のものが、最も快適な走行になっているような気がします。まあこれは、たまたまかもしれません。
サイドロッド(F1-6)はヤスリで3箇所の穴周辺のバリを取ってから、第一・第三動輪にクランクピンで取り付けました(反対側はF1-7)。
あらかじめ、輪心のピン穴を、1.0mmドリルで軽くさらっておくと、ピンが差し込みやすいです。
ロッドが軽く動くよう、ピンはきつく差し込みすぎないように余裕を持たせたいのですが、第一動輪ピンはメインロッドに干渉しやすいため、そうもいかないのが辛いところ…。
これでひとまず走れるようになります。レールに載せて通電し試走しましたが、偶然無調整でうまくいきました。
この状態が走りとしてはベストで、このあと各種のロッド類が増えるにつれて、悪化要素もどんどん増えます。
ラジアスロッドを取り付けました。
1. 外してあったシリンダーブロックとモーションプレート台座を、M1.4×1.5mmネジで固定。
2. ラジアスロッド(F1-1・F1-2)を、バルブスピンドルガイドの穴の後部で、一段外側に曲げました。
後部の加減リンク部にある、エキセントリックロッドを差し込む穴は、手前に90度折りました。
3. 前側をシリンダーブロックの穴に差し込み、後部はモーションプレート台座にM1.0ネジで固定。
ラジアスロッドの段差曲げの大きさは、説明書の写真を参考にしました(1mm程度になりました)。2つのヤットコを使って曲げましたが、短いスパンのクランク折りは難しいです。
クロスヘッドを取り付けました。メインロッドや結びリンクとカシメ済みです(ホント助かります。ずっと続けてほしいです)。
ピストン棒をシリンダーブロックの穴に差し込み、クロスヘッドをスライドバーに引っ掛けました。
あらかじめ、矢印の箇所(ピストン棒・クロスヘッドの裏側・メインロッド前端のストッパー・ビッグエンドの穴周辺)をヤスリで磨き、動きの妨げになるバリなどを除いておきました。
ピストン棒の長さは、最初は一番長くしておき、あとで少しずつ切り詰めて調整しました。クロスヘッドが一番前に来るときにピストン棒がつっかえないように、一番後ろに来るときに抜け落ちないようにします。
エキセントリックロッドとリターンクランクを取り付けました。これもカシメ済みなので楽です。ただし、少し注意点があり、調整が必要なことがあります。
1. エキセントリックロッドを、加減リンクの穴に後ろから差し込みました。
2. メインロッドとサイドロッドを重ね、リターンクランクのピンを第二動輪に留めました。
3. エキセントリックロッドの先端は、ロッドが一番後ろに動いたときに抜け落ちない程度の長さでカットします。
片側を取り付けた状態で正常に走ったら、反対側にも同様に取り付けます。
こちらを取り付けたとたん、まともに走らなくなりました。恐らく原因はリターンクランクです。
エキセントリックロッドはリターンクランクに留められており、2か所の回転軸が平行になっていればうまく動くのですが、
リターンクランクの曲がりやカシメの曲がりで、回転軸がねじれの関係になっていることが時々あり、これを修正しないと正常に動きません。
カシメ付近を無理に曲げると、部品がちぎれてカシメが取れてしまうことがあるので、いつもそこは温存し、なるべくクランクの腕や動輪に差し込むピンのほうを傾けて調整しています。
とてもよく動くようになりました。ウェイトを積まなくても、オイルをささなくても十分な感じです。
バルブスピンドルガイドを黒、クロスヘッドとリターンクランクを銀で塗ってから1日乾かし、最後にコンビネーションレバー(F1-4)を取り付けました。
以上で動力ユニットは完成です。
ようやく機関車の組み立てです。バラキットは部品が本当にバラバラなので、ここまで来る前に、それぞれの組み立て作業がたくさんあるのですよね。
1. ウェイトをボイラー内に差し込みました。
2. ウェイトの穴とボイラーの穴を合わせ、M1.7×2.5mmネジで留めました。
ボイラーと動力ユニットを、後方2本・前方1本のネジで合体しました。
カプラーはZゲージ用の#903を組み立て(完成品は#905)、M1.2×4mmネジで取り付けました。ただ、ネジがデッキの上に出っ張ったので、少々カットしました。
キットにはアーノルドカプラーが付属しています。
先台車を取り付けました。
1. 先台車に車輪を取り付け、車輪押さえをM1.4×1.5mmネジで留めました。
2. 台枠にハンダ付けしてあった2×2Lカラーに先台車をはめ、上にスプリングを載せました。
スプリングは少しカットして2/3くらいの長さにして使いました。
3. ワッシャー(A3-6)を挟んで、M1.4×4mmネジで留めました。
テンダーを組み立てました。
1. テンダーの上下をM1.4×2mmネジで固定。
2. 車輪を軸受けに置き、2つの車輪押さえをM1.4×1.5mmネジで固定。
3. マグネ・マティックカプラーNo.2001のショートシャンクを、M1.2×4mmネジで固定。
キットにはアーノルドカプラーが付属しています。
先日C59戦前形を3Dプリンターで作ったときに、種車にしたC57の石炭が余っていたので、それをカットして載せてみました。
これで組み立ては終了です。
実力不足からあちこちに歪みを残してしまいましたが、走りは偶然よいものになってくれ(私が組み立てたキットとしては、です)、嬉しいです。
今度生まれる?ときは、もっと上手な人に買われておくれ…。
模型の全長は、KATOのC56形と大体同じです(2mm程度長い)。
8620形に似たところもありますが、動輪が小さいので、ボイラーがとても高く浮いて見えます。下をくぐれそうですね。
密閉キャブとテンダーは布のカーテンでつながれていたそうです。たいてい私は窓を開けて作りますが、こちら側は全閉にしてみました。
このキットには、以前に組み立てた片上鉄道C13形と共通点があり、先輪から動輪にかけての構造がほぼ同じで、軸距離も同じです。シリンダーブロックも同じ形状・構造です。
(実物にも設計に共通点があるそうですね)
ただし、キットの片上鉄道C13形のほうは3軸ギヤ連動なのに対し、樺太鉄道60形は2軸ギヤ連動(1軸はロッド連動のみ)なのが異なります。また、片上鉄道C13形は従台車の可動範囲が狭いため、R280を通過できないことがありますが、樺太鉄道60形は少なくともR249までは通過できました。
こういうキットを製品化するまでには、いったいどれぐらいの時間がかかるのでしょう。
ただ組み立てているだけの私には見当もつきませんが、プロの仕事はすごいとつくづく思います。
模型がなければ出会うことがなかった機関車でした。どんなところで、どんなふうに働いていたのでしょうね。
これを含め、8620形をかすめるような模型はいくつか発売されましたが、本命にはなかなか切り込んでもらえません。