Nゲージはレイアウト製作に適したゲージと言われたものの、当初はそもそも車両が極端に少なかったため、TMS誌の投稿記事では車両工作のほうがやや先行した感じがありました。
今よりはるかに素材が少なかった時代に、ものすごい工作が行われていて驚きます。一部ご紹介します。
KATOの初代のC50が発売される頃から2代目のC50が発売されたあたりの、1965年〜1982年までの記事から18点拾いました。
号 | 年月 | 記事名略 | 内容 |
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205 | 1965.7 | 9mmゲージ C59を作って | 有名な1/150金属フルスクラッチ。何と関水C50の発売前。 |
212 | 1966.2 | 9mmゲージの8620 | 発売された関水のC50を早速改造したSキャブ。 |
218 | 1966.8 | 9mmゲージ C50の加工2題 | 関水のC50の細密化例と、自由形4-4-0への改造例。細密化も早速始まっている。 |
226 | 1967.4 | 9mmゲージ 古典ロコ三題 | 6250、8550、4030のフルスクラッチ。モーターも自作。 |
229 | 1967.7 | 9mmゲージ C50をC11タイプに | 初代C50をC11風に改造。モーターは改造のうえキャブ内に移植。 |
247 | 1969.1 | 9mmゲージの国鉄蒸機 2800と8800 | モーターも自作し金属自作。8800はイコライザーも全軸可動。 |
254 | 1969.8 | 9mm国鉄型 C58・DD54・581系 | C58は全金属製、関水のミゼットモーターを使用したエンジンドライブ。 |
超小型模型の製作手法が確立していなかった時代にあって、何人かの達人の手から巧みな金属製のご作品が繰り返し生み出されていきます。いきなりC59で度肝を抜かれますね。初期のフルスクラッチ品の数々は、当時でも大多数のファンにはちょっと手が出せないレベルの工作であったと思います。
KATOの初代C50が発売されてから、早速8620、8800、C11などへの改造も行われています。これしかなかったのですから、これで作れるものはみんな作るという感じ。
このほかにも色々と工作があり、1960年代には早くも名鉄パノラマカーの編成や、DD51やDD54まで製作されています。
号 | 年月 | 記事名略 | 内容 |
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281 | 1971.11 | 9mmゲージで2120を作る | 金属フルスクラッチ。モーターは関水3極。煙室扉も可動。 |
295 | 1973.1 | 自家製ダイカストで動輪を作る 9mmゲージC57 | 金属スクラッチ、動輪は自作ダイカスト、そのダイカストマシンも自作。 |
328 | 1975.10 | 9mmゲージの流線型C55が走りだす | TMS企画・しなのマイクロ製造のエッチングキット。有名だが完成例は少ない。 |
342 | 1976.12 | プラ製SLを利用した8620・C58ほか | 有名なフジミのプラ模型改造製作。8620はC11の、C58はD51の動力を切り継ぎ大改造。 |
345 | 1977.3 | 9mmゲージ自作蒸機 国鉄8620形 | 金属自作。外径9mmのボイラーはラジオのロッドアンテナより。エッチングも自前。 |
369 | 1979.1 | Nゲージでスクラッチビルト! 古典機と客貨車 | 5300、2120, 1320, 2700, 1690, 600(A8), 8100の金属自作。リベットも植え込み。 |
1970年代には次第にレイアウト作りが活発化していきます。KATOからC11・C62・D51なども市販されたほか、SLブームによる市販プラ模型の増加などで、一般のファンにとっても改造などを楽しむ選択肢が増してきます。
一方で達人の手によるフルスクラッチも引き続き行われ、次々に紹介車種が増えていきます。
1975年にはTMSの息がかかった有名なC55のエッチングキットも発売されます。現在のエッチングキットに比べると製作者の腕が物を言う部分が多いです。残念ながら私に無理であることはすぐわかりましたので、手を付けたことがありません。
あのフジミのプラ模型を実際に動力化した方がいらっしゃったのは驚きでした。当時、これが動力化できないかな〜と思っても、普通は少しいじり回したら「無理だな」で終わってしまったんですよね。
号 | 年月 | 記事名略 | 内容 |
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384 | 1980.2 | NゲージでC57を作った | 上廻り1/140、0.3mm銅板などから自作。動力はC62改造、テンダーはD51より。 |
386 | 1980.4 | 完成まで工作300時間! Nゲージの国鉄C58 | 1/150で金属自作。動輪は外注品に加工。コアレスモーターをボイラーに収納。 |
405 | 1981.8 | Nゲージの工作 スクラッチビルドの“B6”2120と古典客車 | 金属自作。モーターはサガミS-1220。動輪はアトラスのコンソリより。 |
408 | 1981.11 | Nゲージの工作 C62+D51でE10を | 下廻りはD51の後部にもう1軸追加。上廻りはC62の切り継ぎ等。 |
421 | 1982.10 | 東武63号機をNゲージで作る | 金属自作。透明プラ板にペンで作図してエッチング。動輪等は関水の旧C50より。 |
1980年代には各社からC57が発売されますが、384号のご作品はメーカー品を待ちきれずに自作されたそうです。この年代には次のC58のようにコアレスモーターも利用できるようになりました。
なおこの頃になると市販車両の軽加工やディテールアップも普通となり、全体的には金属スクラッチのようなヘビーなものだけではなく、一般のファンも楽しめるような工作がたくさん紹介されるようになっていました。
欲しいものがなければ作るというのは今も昔も変わりませんが(まあ、あきらめるというのが一番多いかもですが…)、利用できる市販の素材の種類は大きく変化していますね。ただ今でも色々な車両に目を向けると、作りたくても動輪をどうしよう…などという問題は引き続き悩ましいものと思います。 家庭用の3Dプリンターでも、Nゲージサイズの駆動輪を丸ごと作るにはまだ精度の点でとても無理です。昔の鉄道プラ模型クラスのものでよければ今でもある程度行けるんですが…。